<金口木舌>「空からの災難」の責任は - 琉球新報(2020年8月20日)

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作家の野坂昭如さんは、地震避難に「火の始末身軽さと足もとの用心が第一」と書いた。関東大震災の教訓らしい。げた履きの鼻緒が切れると「硝子(ガラス)片(へん)などの散乱する道を歩けたものではない」と予備の必要性を説く

▼焼跡闇市派の野坂さんは、当時の空襲の受け止めは「天変地異」で「空からの災難」と書いた。もちろん空襲は地震とは違う。「被害を少くするためのコツなんてものは、伝承しにくい」
東京大空襲・戦災資料センターによると、沖縄の地上戦を除き全国400の市町村で41万人以上の民間人が犠牲になった。連合軍は軍事標的から次第に非戦闘員も対象とする無差別攻撃へと拡大させた
▼戦後、元軍人・軍属には戦争被害の補償があったが、民間人にはない。国の謝罪と補償を求めた裁判も提起されてきたが、戦災は等しく我慢すべしとする戦争被害受忍論の法理で退けられてきた
▼大阪空襲訴訟弁護団の大前治弁護士は、空襲で犠牲が広がったのは「逃げずに消せ」との防空法制があったからだと指摘する。国の施策で被害が拡大したのなら、誰が責任を負うのか
▼戦争に負けて75年。今も戦後処理問題は未解決のまま。司法が解決しない中、当事者は立法による救済を求める。次の臨時国会では新型コロナ対策はもちろんだが、75年越しの課題を災害に終わらせないようお忘れなく、国会議員の皆さま。