<南風>効率良く過ごすとは - 琉球新報(2020年8月19日)

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現在、名護市にある自宅から那覇市まで往復3時間弱の遠距離通勤をしている。職場での勤務時間を加えると約12時間。睡眠不足がすぐに体調に現れるので睡眠は削れない。帰宅後も気づくとあっという間に就寝時間。慌ただしく過ぎ去る日々である。
ミヒャエル・エンデ作の『モモ』を読み返そうと思ったのは、「時間」について考えることが増えたから。この小説は、少女モモが時間泥棒と闘う物語である。時間貯蓄銀行に勤める灰色の男たちは、人間に時間を節約して貯蓄することを勧める。〈ひとりのお客に半時間もかけないで、15分ですます。むだなおしゃべりはやめる。年寄りのお母さんと過ごす時間は半分にする〉灰色の男たちは、人間から時間を盗んで生きているのだ。
誰しも平等に与えられた時間を効率良く過ごすため、できるだけ早く、できるだけたくさんのことをやりたいと思っている自分がいる。しかし、効率の良さとは何か。それは単に歯車をできるだけ早く回すことではないのではないか。
考えたのは、「自分が機嫌良く過ごすこと」。機嫌が良く余裕があれば、自分を取り巻く相手へ思いをやることができ、仕事も私生活も一つの人生としてストレスレスな環境をつくることができる。そんな環境で、本当に大切なこと、大切な人と時間を過ごすこと、それこそ効率の良い1日なのではないだろうか。
私の通勤時間は、好きな読書をオーディオブックで聴く「聴書」時間であり、職場で仲間と交わす雑談がよりよいアイデアの元となり、家族とのおしゃべりで頭がすっきり整理される。

〈けれど時間とは、生きること、そのものなのです。そして人のいのちは心を住みかとしているのです。人間が時間を節約すればするほど、生活はやせほそっていくのです〉