少年法見直し 立ち直り支える内容か - 朝日新聞(2020年8月8日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S14579769.html

評価と懸念が入り交じる。少年法などの見直しを検討している法制審議会の部会に、法務省が示した要綱原案である。
今回の議論は、選挙年齢や民法の成年年齢が20歳から18歳に改められたのを受けて行われた。少年法の対象年齢もこれにあわせるか否かが、最大の論点になっていた。
評価できるのは、引き下げの当否に直接言及するのは避けつつ、18・19歳についても事件を起こした全員を家裁に送る制度を維持したことだ。成育歴や交友関係を専門の職員が調べ、それを踏まえて家裁が保護観察にしたり少年院に入れたりする。
犯した罪に対する責任を問う刑事手続きと異なり、少年手続きは、発達途上にある少年の特性を考え、立ち直りを促すことに重きを置く。大人だと起訴猶予などになって、そのまま更生に向けた手助けを受けられないようなケースでも、少年であれば国が関与してフォローが続く。再犯防止の観点からも「全件送致」を維持することには大きな意義がある。
かたや懸念は、家裁から検察官に送り返して刑事裁判にかける犯罪の範囲を広げるとしたことだ。逆送と呼ばれるこの措置は、現在も16歳以上が殺人や傷害致死など故意で人を死なせた場合、原則として適用される。原案は、18・19歳については、これに強盗、強盗致傷、強制性交、放火などを加えるとした。
だが犯行の態様は色々だ。悪質さには幅があり、強盗といっても恐喝に近いものもある。また刑事罰を受けると、仕事に役立つ様々な資格の取得制限が大人並みに厳しくなり、更生の道はいま以上に困難になる。厳罰化が真に社会のためになるか、慎重な検討が必要だ。
少年犯罪は長らく減少傾向にあり、18・19歳の刑法犯検挙人数は、18年までの10年間で約1万7千人から7千人に減った。新たに逆送対象にするとされた先の四つの罪名で見ても、18年中に処分されたのは100人強で、10年前の半分以下となっている。少年法がうまく機能してきた証左といえよう。
だが「見直しありき」の自民党が先月末、逆送の拡大などで公明党と合意したため、法制審もその方向で議論をまとめようとしているのが実態だ。
少年法に対しては、本人の立ち直りを重視する結果、施設への収容期間が長くなるなど、かえって少年の権利の制約を招きかねないとの指摘もある。
しかし教育や指導を受けて生活を変え、いま社会を支えている「元非行少年」も大勢いる。それぞれの事情に応じた処遇を通して、法が掲げる健全育成の理念を実現することが大切だ。