https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200305/KT200304ETI090006000.php
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首相会見の意義を問い直す必要がある。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、全国の小中高校などの臨時休校を要請した安倍晋三首相が、2月29日に開いた記者会見である。
感染が拡大して以降、首相が初めて開いた。記者も踏み込んだ質問をしておらず、国民の知る権利に応えたとはいえない。
安倍首相は保護者の所得減少対策や、ウイルス検査の拡大策などを原稿に沿って話した。その後5問の質問に答え、会見を打ち切った。会見時間は36分間だった。
問題は多い。質疑では要請を決めた当日に会見を開かなかった理由や、休校でどこまで感染を抑えられるか、などの質問があった。
安倍首相は説明が遅れた理由について真正面から答えず、期待できる効果は言及しなかった。
終了直前には出席者から「まだ質問がある。ちゃんと答えられていない」との声が出たが、司会の内閣広報官は「予定時間が過ぎている」として取り合わなかった。
会見は土曜日夕方だ。国会や閣議もなく官邸に来客もなかった。首相動静によると、終了の約30分後には帰宅している。時間は十分にあったはずである。
2日の参院予算委員会では、この問題が取り上げられた。首相は出席者からあらかじめ質問の趣旨が提出されていると説明し、「誰にお答えさせていただくかは、司会の広報官が責任を持って対応している」と述べている。
認識に問題がある。会見は国民が知りたいと思う内容に答える場であり、首相が話したいことを選択して主張する場ではない。
休校は子どもたちの「学ぶ権利」を一時的に損ない、保護者が仕事を休めば所得減にもなる。国民の関心はなおさら高かった。
首相は休校要請を自ら政治的に決断したと述べている。そうならば、決断した理由や今後の見通し、所得補償の詳細、感染拡大防止策などについて、首相が直接質問に答えることができたはずだ。側近が用意した原稿を読み上げるだけでは国民は納得しない。
予算委で首相は「(会見は)いつもそのような形」と述べた。この状態を許容してきた責任は報道機関にもある。
首相が質問に十分に答えないなら、再質問をして納得できる答えを引き出す努力をすべきだった。報道機関こそ国民の知る権利に何より敏感でなければならない。会見も主導すべきだ。内閣記者会は世論の批判を受け止め、会見のあり方を改めてほしい。