<金口木舌>まるで独演会 - 琉球新報(2020年3月6日)

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「卒業式に後輩たちがいないのは残念だ」。卒業を控えた県内の中学3年生が本紙の取材に答えている。新型コロナウイルスによる肺炎の拡大を受け、一部の学校は卒業式に在校生を出席させないことを決めた。後輩との別れが早まり、無念な思いが伝わる

安倍晋三首相が国民に協力を呼び掛けた2月29日の記者会見は、「まだ質問があります」と記者が声を上げる中で打ち切られた。学校を休校にしなければならない科学的根拠など、多くの疑問は解消されずに残った
▼36分間の会見の半分以上を首相の冒頭発言が占めた。記者5人から質問を受けたが、首相は事前に用意された文章を見て答えていた。「一人一人の協力は欠かせない」と国民に呼び掛けながら説明が足りない
▼今回だけではない。「桜を見る会」や森友学園加計学園の問題などで噴出する疑惑でも真摯(しんし)な説明を避けている
▼会見や官邸でのぶら下がり取材など、首相への取材機会は限られる。その中で説明が尽くされなければ国民に情報は伝わらない。日本新聞労働組合連合は、昨年12月に発表した声明で「首相に対する日常的な質問機会を復活」させるよう求めた
▼独演会のような一方的な会見はメディアとのなれ合いさえ疑わせる。多くの人に影響が及ぶ問題は、質疑の時間を2、3時間取ってもいい。会見の在り方も考え直す必要がある。