[大弦小弦]見えない空の壁 - 沖縄タイムス(2020年2月7日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/531922
http://archive.today/2020.02.07-012246/https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/531922

ネオンきらめく新宿や渋谷の繁華街上空をジェット旅客機が飛び、東京スカイツリーはその機影を見下ろす

羽田空港の国際線増便に伴い、都心を通過する新たな飛行ルートの実機飛行が始まった。経済効果への期待感がある一方、ルート直下の住民らは「騒音や部品落下が不安」と話す

▼新ルートは、米軍に管制権がある横田空域(横田ラプコン)の東端を数分間横切る。日米協議の末、米側が容認した。自国の首都上空を飛ぶのに外国の許可が要るというのもおかしな話だ

▼横田空域は東京から新潟まで1都9県に及び、高度約7千メートル~約2450メートルを階段状に6段階で設定。米軍機優先の巨大空間が日本列島の真ん中付近を遮る

▼羽田発着の民間機は必然的に急上昇や遠回りを強いられる。国内外の航空会社労組などでつくる航空安全推進連絡会議は「効率的運用ができず、障害となっている」とし、空域の撤廃・低高度化を政府に求めているが、実現は見通せない

▼もし空域がなくなれば羽田の可能性は格段に広がる、と思いたいが、現実は一筋縄ではいきそうにない。沖縄では、嘉手納ラプコン返還後も米軍優先の制限空域がなお存在する。日本外交が弱いのか、米国が既得権益固執しているのか。横田空域の一部通過は、米側にとって切りやすいカードだったに違いない。(西江昭吾)