[ドローン規制法成立]報道の除外を明示せよ - 沖縄タイムス(2019年5月18日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/421242
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いまでも立ち入り調査がほとんど認められていない米軍基地の「ブラックボックス化」が進む懸念が消えない。
小型無人機ドローンによる在日米軍基地や自衛隊施設上空の飛行禁止を盛り込んだ改正ドローン規制法が17日の参院本会議で、与党などの賛成対数で可決、成立した。
施設内と、外側約300メートルの上空が規制される。米軍基地については提供水域と空域も含まれ、米軍専用施設の約7割が集中する沖縄では特に、取材規制などで深刻な影響を受けるのは間違いない。
防衛省沖縄防衛局が土砂投入を強行している辺野古新基地建設現場にも広大なキャンプ・シュワブ水域が広がる。
本紙写真部がドローン規制法改正を想定して水域から約300メートル離れた名護市安部からドローンを飛ばして撮影した新基地建設現場の写真が17日付紙面に掲載されている。
現場まで約3・8キロも離れており、土砂運搬船や護岸がかろうじて見える程度だ。具体的な作業の様子はまったく確認できなかった。工事をチェックする目をふさがれる危機感が募る。
報道機関や市民団体はドローンを使った空撮で、土砂投入に伴う赤土流出の疑いや汚濁防止膜の設置不備による濁った水の流出、工事の進捗(しんちょく)状況を明らかにするなど監視機能を果たしてきた。
沖縄の米軍基地の特徴は民間地域に近いことだ。米軍の軍事活動が県民の生命や財産、生活環境を脅かしている以上、基地内で何が起きているのか知る必要がある。

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ドローン規制は米軍が日本側に要請した経緯がある。
2017年11月に当時の米太平洋軍司令官が防衛相と会談した際、米軍キャンプ・シュワブでのドローンの飛行を規制するよう強く要請した。
改正法では基地司令官などの同意があれば飛行できるとするが、規制の経緯を考えると、司令官が同意する可能性はほとんどない。
具体的にどの米軍基地を指定するのかは米側と協議して防衛相が判断するという。米軍の恣意(しい)的な運用がなされる懸念が拭えない。基地周辺300メートルの飛行禁止も政府はすでに国会で範囲を拡大する方向性を示唆している。
基地周辺の恒久的な規制と、9月のラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会、東京五輪パラリンピックの会場を取材メディアを除き上空飛行を禁止する時限的な規制とセットだ。テロ防止を全面的に押し出し、恒久的な規制を隠すのが政府の意図である。

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県マスコミ労協は声明で「基地の実態を隠し、米軍や自衛隊の都合を優先する法改正に強く反対する」と批判した。日本新聞協会は「限度を超える規制とならないよう注視していく」とする編集委員会代表幹事の談話を発表した。
衆参両院の内閣委員会は国民の知る権利と取材・報道の自由を損なうことのないよう慎重かつ合理的な運用を政府に求める付帯決議を採択。米軍の実態に目隠しするような法改正を日本側がするのがそもそも本末転倒である。報道目的には除外規定を設けることを明示すべきである。