少年法適用年齢 引き下げ方針の撤回を - 信濃毎日新聞(2020年1月28日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200128/KP200127ETI090008000.php
http://archive.today/2020.01.28-005936/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200128/KP200127ETI090008000.php

少年法の適用年齢を現行の20歳未満から18歳未満へ引き下げる改正案について、政府は今国会への提出を見送る方向だ。
日弁連が、現行制度は有効に機能しているとして改正に反対する決議を採択した。元家裁調査官や元少年院院長らからも反対の声が上がっている。
約3年前に法相から諮問を受けた法制審議会でも反対意見があり、結論は出ていない。公明党の反対も強く、与党内の調整がつかない状況だ。
選挙権年齢や成人年齢を18歳にした公職選挙法民法の改正に合わせるため、引き下げありきで議論が進んできた感が否めない。
現行制度を変える必然性が見つからない以上、政府は改正案の提出方針を撤回するべきだ。
少年法は、20歳未満の少年が事件を起こした場合の手続きを定めている。処罰ではなく教育や立ち直りに重点を置く。
全事件について、家裁が成育歴や家庭環境を調べ処分を決める。保護観察や少年院送致といった「保護処分」を選択肢に設け、社会復帰や再犯防止につなげる。
引き下げで問題になるのは、18、19歳の扱いだ。少年事件に関わった人たちは、一様に立ち直りの可能性が高い年齢と指摘する。
当初法制審が議論した案は、検察が全事件の処分を決め、起訴猶予の人を家裁に送る内容だった。
これでは起訴されると、家裁の調査による立ち直りに向けた教育的措置が受けられなくなる。どこまで大人として責任を引き受けられるのかも疑問だ。
さらに事務局の法務省は家裁の関与を強めた2案をまとめている。全事件を家裁にいったん送致する案と、一部事件を除き家裁に送致する案で、現制度に近い。
ならば年齢引き下げは必要なのか。引き下げを前提に、18、19歳の処分のあり方を無理やり検討しているようにしか見えない。
少年法の理念を踏まえた深い論議には、到底至っていない。
少年法は、少年による凶悪事件が起きるたびに厳罰化の方向へ改正されてきた。
刑罰対象は16歳以上から14歳以上、少年院送致できる下限は14歳から「おおむね12歳」、有期刑の上限は15年から20年になった。
この上、年齢を引き下げることでどんな効果を生むのか。納得のいく説明が伝わってこない。
少年法に基づく立ち直りは、数多くの実績を積み、社会に定着している。それを否定するような議論を認めることはできない。