日本語教育 共生社会の土台として - 信濃毎日新聞(2019年12月29日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20191229/KT191227ETI090016000.php
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上田市で開かれた外国人集住都市会議が、日本語教育の強化に向けた国の支援を求める宣言を採択した。
国は今年、改正入管難民法施行で外国人労働者の受け入れ拡大にかじを切った。生活や進学に必要な日本語習得の重要性が増している。
今後の社会を共につくっていくため、日本で暮らす外国人に日本語を学ぶ機会が保障されねばならない。課題を広く共有したい。
定住外国人日本語教育はこれまで、必要性を感じた地域の有志や市民団体が主に支えてきた。製造業で働く日系ブラジル人が1990年代に増えた地域などに、多くの日本語教室ができた。
今年6月に成立した日本語教育推進法は、そうした取り組みの重要性を受け止め、推進を国や自治体の責務と定めた。どう具体的に充実させるかが問われている。
まず目指すべきは、義務教育での充実だろう。親と来日した子どもは、言葉の通じにくい学校生活で苦労することになる。
日常会話ができるようになっても、抽象的な思考にはより高度な日本語能力が要る。教科内容が抽象化する小学校3、4年からつまずく事例が多いという。
高い専門性が要求されるのに日本語教師は公的資格がなく給与も低いため、なり手が少ない。文化庁によると2017年度に教師の6割がボランティアで、非常勤講師が3割。常勤は1割だった。
公的資格を早く設け、社会的な地位を確立する必要がある。
小中学生の年齢になっても学校に通わない「不就学」の問題も深刻だ。今年、文部科学省が初めて実施した調査で、全国に1万9654人いることが分かった。長野県内は66人だった。
親が仕事で忙しく日本語を十分に理解できないことなどが背景にあるとみられる。家できょうだいの世話をしたりしている子どもがいるとの指摘もある。各家庭への戸別訪問など、行政や地域の積極的な対応が欠かせない。
上田市に住む17歳の日系ブラジル人の少女が、義務教育の年齢を超えているとの理由から中学校で日本語が学べず、残念な思いをしている。本紙の報道だ。
国は現在、不登校などで学校に通えなかった人が再び学ぶ場を確保するため、夜間中学の設置を進めている。在留外国人の勉強の場としての需要も高まっている。
全国では9都府県に計33校が設置されているが、県内にはまだない。県や市町村は、設置に向けた検討を進めてほしい。