https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20191001/KT190930ETI090006000.php
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幼児教育・保育の無償化が始まった。
国の制度に独自の減免措置を上乗せした自治体が目立つ。認可外保育施設に対する安全指導の取り組みにも温度差がある。
同じ子育て世代でありながら、住む場所によって保護者の負担は異なり、全く恩恵を受けられない人たちもいる。
ほころびだらけの出発になったことは否めない。保護者や保育現場の声を聞き、柔軟に制度を見直す姿勢が政府に求められる。
3〜5歳児は原則全世帯、0〜2歳児は住民税非課税世帯が対象となる。認可外は上限を設け、一定額を補助する。
給食費や遠足費、送迎費は無償にならないため、給食費を免除したり、認可外の利用料補助を増額したりする自治体が出るなど、ばらつきが生じている。
紆余(うよ)曲折をたどった認可外の扱いについては、自治体が条例で無償化の施設を定めることで決着した。実際に条例を作った市町村は少ない。保護者は認可施設に入れないため認可外を使っているのだから、線引きは難しいはずだ。
国の設置基準を満たさない認可外での死亡事故の発生率は、認可に比べて高い。行政の監督指導が行き届かない状況で、保育の質に対する親の懸念が置き去りにされる形になった。
幼保無償化は2年前、安倍晋三首相が唐突に言い出した。社会保障を全世代型に切り替えるとし、減り続ける出生率の向上につなげると主張した。現場の意見を聞かずに制度設計を急ぎ、消費の落ち込みを避けるとの理由から開始時期も半年前倒しした。
当の保護者からは「保育園の整備を優先し、待機児童の解消を図って」との訴えが絶えない。単に受け皿を増やすのではなく、全産業平均に比べ月給が7万円余も低い保育士の待遇を改善し、研修も増やして「保育の安全性を高めてほしい」との要請も強い。
安倍政権が待機児童解消を重視するのは「女性就業率80%」を達成するためという。一方で、幼保無償化を「重要な子育て支援策」に位置付けている。経済政策と少子化対策を一緒くたに捉えることに無理があろう。
少子化対策なら全ての親子が公平に受益できる仕組みにしなければならない。自治体間の格差を是正するのは国の責任だ。無償化の財政負担を地方に押し付けてもいる。外国人学校を対象から除外している問題を含め、改善が必要な課題が既に山積している。