https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190916/KT190915ETI090001000.php
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大切にしているはがきがある。東京支社を離れるとき、先日亡くなった池内紀さんから送られてきた。＜絶妙な仕事仲間を失うことになって、とても痛手です＞。自筆の挿絵があり、丘の赤い屋根の家から炊煙がのどかに上っている
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池内さんは本紙夕刊コラム「今日の視角」火曜日の筆者で、編集デスクとして原稿をやりとりした。時々、掲載日の直前に差し替え原稿が送られてくる。例えばパリ同時テロ、熊本地震、国政選挙、トランプ米大統領誕生を受けて。ほのぼのとした話題をきれいな日本語でつづられたが、権力や暴力に向ける目は厳しかった
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敬老の日のきょう、長命をことほぐ気分も「人生１００年時代」のかけ声に減殺されてしまう。「あらゆる人にチャンスがあふれる１億総活躍社会に向けて進もう」とは安倍首相の言。元気で長生きは誰もが望むところだろうけれど、こうせき立てられると少々うんざりする
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出会ってきた高齢の方々を思う。訪ねれば優しく迎えてくれた。戦中戦後の経験も問わなければ語らず、自らを押し出すことはまれで、かえって内面の豊かさを感じさせた。この人たちから、どれだけのことを学び得たろう
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池内さんのはがきの末尾に＜社会的弱者の立場から日々のお仕事を期待しています＞とあった。社会から「成熟」が消えかけている。この国の経済のためではなく高齢の皆さんの健康長寿を願う。見失ってはならない大切なものをもっと教えてください。
