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民間地に銃弾が撃ち込まれながら、捜査機関の検証を受けることもなく、発砲した容疑者側の言い分だけで決着が図られる。住民の安全を脅かす「治外法権」をいつまでも放置するわけにいかない。
2018年6月21日に、米軍キャンプ・シュワブに隣接する名護市数久田の農作業小屋で50口径の銃弾が見つかった事故から1年が経過した。米軍はこのほど、原因を「人為的ミス」と位置付けた上で、流弾と同一の50口径弾を使用した訓練を再開すると沖縄防衛局に通知した。
米軍基地から派生する被弾事故は復帰後、29件発生した。このうち9件がキャンプ・シュワブからだ。事故が起きるたびに米軍は「安全対策がなされた」として訓練を再開してきたが、再発防止は守られたためしがない。
今回も発生から1年もの時間を要しながら、民間地まで銃弾が届いてしまう演習場で引き続き実弾を使用する結論を出してきた。周辺住民の安全軽視も甚だしい。事故の真相もはっきりしない。訓練再開は言語道断だ。演習場を閉鎖し、撤去する以外に実効性のある再発防止策はない。
銃弾が発射されたシュワブ内の実弾演習場「レンジ10」を巡っては、02年7月にも数久田のパイナップル畑で農作業をしていた男性の近くに着弾する事故があった。銃器の射程が基地内に収まらず、民間地に弾丸を撃ち込む恐れがある明らかな欠陥演習場だ。
名護市や数久田区はレンジ10の撤去を求めてきた。これに対し米軍は「再発防止策を講じた上で射撃訓練を再開する」と継続使用を強調する。地元住民の安全よりも、訓練の維持が優先事項という軍隊の本質を露呈している。
原因究明や安全対策を米軍に委ねるしかない現状では、人命に関わる重大な事故が繰り返されるばかりだ。
流弾がレンジ10から発射されたものだった事実を米軍が認めたのは、発生から約6カ月も過ぎてからだった。この間に県警は流弾と同種の実弾の提供を求めてきたが、結局1年たっても米軍は応じていない。
米軍の公務中に発生した事件では、米軍側が第1次裁判権を持つと規定する日米地位協定が県警の捜査を阻んでいる。02年の数久田や08年の金武町伊芸、17年の恩納村安富祖の流弾で、県警は被疑者不詳のまま書類送検する形で捜査を終えている。地位協定の改定が不可欠だ。
日本側による原因究明や再発防止に米軍の協力を引き出すには、県警の力だけでは壁が厚すぎる。
沖縄には「米軍などとの連絡・調整」の役割も担う外務省の「沖縄担当特命全権大使」が存在するが、事態の当事者として調整に奔走するような存在感は一向に見えてこない。危険との同居を余儀なくされる地元住民の要求を踏まえ、演習場の速やかな閉鎖に動くべきだ。