(余録) 関ケ原合戦の時代に日本に住んだスペイン商人ヒロンは… - 毎日新聞(2019年6月21日)

https://mainichi.jp/articles/20190621/ddm/001/070/117000c
http://archive.today/2019.06.21-001830/https://mainichi.jp/articles/20190621/ddm/001/070/117000c

関ケ原合戦の時代に日本に住んだスペイン商人ヒロンは「日本王国記」に戦乱の世の日本人の戦闘性や残虐性を記した。だが彼は日本の子供については「非常にかわいく、優れた理解力をもつ」と称賛する。
「それを父母に感謝する必要はない。父母は子供を罰したり、教育したりはしないからである」。西欧では子供をムチでしつけた昔、人を斬(き)るのを勇ましいと言う日本人が「子供を罰するのは残酷だ」と言うのにヒロンは驚いている。
昔は子供への体罰がないことで多くの西欧人を驚かせた日本人だが、今や国連委から子供への暴力に対策を求められる時代である。成立した改正児童虐待対策関連法は親の体罰を禁止し、民法の親の懲戒権のあり方の検討もうたった。
悲痛な幼児虐待死事件を受けて、しつけ名目の虐待防止や児童相談所の体制強化をめざした改正法だった。児相では子供を保護する「介入」と保護者の「支援」の担当者が分けられ、医師と保健師の配置が義務化されることになった。
虐待した親への医学的指導もうたわれ、配偶者暴力相談支援センターとの連携など虐待の病巣に分け入った対策も求められている。だが先日の札幌の虐待死でも露呈した要員不足と疲弊の深まる児相が、増える課題に対応できるのか。
都市部では子供の安全確認や夜間休日の相談の対応をNPO法人に委託しているところもある。「子供をむごい目にあわせてはならない」。昔も今も、行政も民間も、大人が力を尽くすべきはこの一点である。