[オスプレイ墜落不起訴]地位協定改定しかない - 沖縄タイムス(2019年12月13日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/510037
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名護市安部沿岸で2016年12月、米海兵隊のMV22オスプレイが墜落し大破した事故で那覇地検は、航空危険行為処罰法違反の疑いで書類送検された当時の機長を不起訴処分とした。公務中の罪は米軍に1次裁判権があるとする日米地位協定の前に、日本の捜査権は全く無力だということが今回も証明された。
捜査を巡っては中城海上保安部が複数回、当時の乗員への聴取を要請したが、米軍は応じなかった。散乱した機体など証拠物も米軍が回収したため触れられなかった。
その上、外務省沖縄事務所の川村裕沖縄大使は捜査について「日米地位協定が支障になったとは認識していない」と発言。沖縄事務所と沖縄防衛局がこの間、米側に捜査への協力要請をしていなかったことも明らかになった。
これら日本側の態度は、米軍へ積極的に捜査権を渡すというメッセージを発したに等しい。
04年8月に発生した沖縄国際大学への米軍大型輸送ヘリ墜落事故では、地検の不起訴処分が出る前に、書類送検された整備兵4人について、米軍が、降格や減給、けん責などの処分をくだしたことが分かった。
一方、今回は、米軍の事故報告書で機長の操縦ミスが原因と結論付けられているのに対し、事故から3年たった現在も、米軍が機長を処分したかどうかさえ明らかにされていない。事故の再発を防ぐ対応策も見えず、県民は不安にさらされたままだ。米軍へ捜査協力を求めてこなかった不作為の罪は大きい。

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地位協定を巡っては今年7月、米軍機事故対応指針が改定された。04年の墜落事故で米軍が地位協定を盾に日本側の現場周辺立ち入りを認めなかった問題を受けて「日本側の内周規制線への迅速かつ早期の立ち入りが可能となる」との文言が盛り込まれた。
しかし、米側の同意が必要という根本的な課題は残ったまま。米軍関連の事件・事故が相次ぐ中では、指針改定が米軍機事故に限定されている点も問題だ。
今月5日には金武町伊芸区の民間地に米軍の照明弾が3個落下。地元住民が身近で目撃し、住宅地や車両、通行人を直撃していた可能性もあるだけに、県警の捜査が待たれるが、米軍の協力が得られるかどうかは不透明だ。
演習場に近い同区では08年にも流弾事件が発生したが、米軍が県警に演習場への立ち入りを許可したのは事件から1年後だった。結果、被疑者は特定できず不起訴処分となったことは記憶に新しい。

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復帰前の米軍関係事件・事故の多くは、沖縄側に裁判権がなく、裁けなかったり、形だけの処分で終わったりした。不処罰の歴史は、現在も地位協定によって続いており、小手先の運用改定で事態は変わらない。
県民が生活する場で繰り返される重大事故が度々不起訴とされる現実こそが、地位協定の根本的な欠陥を露呈している。何度でも言う。地位協定を改定せよ。