<金口木舌>民族の英雄 - 琉球新報(2019年6月21日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-940314.html
http://archive.today/2019.06.21-002731/https://ryukyushimpo.jp/column/entry-940314.html

1669年6月、北海道で松前藩との不平等な交易によって困窮していたアイヌ民族が蜂起した。約2千人が現在の新ひだか町長万部(おしゃまんべ)町に当たる太平洋岸で戦ったが、東北諸藩から援軍を得た松前藩に敗北した

▼蜂起を主導し、謀殺されたアイヌの首長シャクシャインは民族の英雄として語り継がれている。新ひだか町にはシャクシャイン像が立っている。長万部町は没後350年を記念し、9月に太平洋岸を徒歩と船でつなぐ「慰霊のリレー」を予定する
シャクシャインアイヌ民族の英雄とされるように、非業の死を遂げ「民族の英雄」と呼ばれる人物は各地にいる。沖縄にもそんな人物はいるだろうか
琉球国の時代から現代までさまざまな人物が思い浮かぶが、松島泰勝龍谷大教授はシンポジウムなどで謝名親方利山(鄭迥(ていどう))を挙げる。利山は1609年の薩摩侵入時の三司官だ。薩摩藩に従うことを誓わせる起請文(きしょうもん)の提出を拒否して捕らえられ、2年後に斬首された
八重山には15世紀、農民のために戦ったオヤケアカハチがいる。琉球王府の過酷な徴税に反旗を翻したとされている。石垣市大浜では毎年旧暦3月3日に慰霊祭が行われている
▼各地の少数派は国家や多数派と向き合い、苦難の歴史を歩まされてきた。それぞれの「英雄」を介し、新たなつながりを模索する道もあるのではないだろうか。