辺野古の計画外工事 法治国家の衣投げ捨てた - 琉球新報(2019年6月13日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-935296.html
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県民投票で示された民意を一顧だにせず、なりふり構わず工事を強行する。法治国家の衣をかなぐり捨てたかのような国の姿勢である。
米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、沖縄防衛局は新たに造成した「K8」と呼ばれる護岸を使って、埋め立て用土砂の陸揚げを始めた。
2013年に防衛省が県に提出し14年に変更された公有水面埋立承認願書の「設計概要説明書」は、現在の工事区域の土砂搬入場所として大浦湾側の埋め立て区域の「中仕切岸壁」を明示している。「K8」護岸や、先に使用している「K9」護岸からの陸揚げについては触れていない。
設計概要説明書に記載した事項は県に対する約束事である。護岸に係船機能を追加するのなら県の承認が必要になるはずだが、協議の申し出すらない。
これについて岩屋毅防衛相は7日の記者会見で「具体的な陸揚げ場所までは特に限定されているわけではない。K8護岸からの搬入は問題ない」と言ってのけた。
防衛相の発言は、提出した文書が単なる参考資料であって従う必要はないと表明したに等しい。そうであれば、このような説明書に何の意味があるのか。その場しのぎで作成したものだったのか。
今後、埋め立てを伴う公共工事を国が進める際に提出される設計資料は、内容が予告なしに無断で変更されるという前提で受け取らなければならなくなる。ひとり沖縄だけの問題ではない。
法令の順守を指導する立場にある政府が、本来取るべき手続きを無視して埋め立てを進めている。独裁国家と見まがうような振る舞いである。
土砂の搬入を急いだからといって、全体の工期が短縮されるとは思えない。埋め立て予定海域東側に軟弱地盤が広がっているからだ。既成事実を積み重ね、県民に無力感を味わわせ、諦めさせることが目的と言っていいだろう。
軟弱地盤は最も深いところで海面から約90メートルに達する。広範囲にわたり改良工事が必要になるという。地盤強化のため砂を締め固めたくいを約7万7千本打ち込む工法が検討されているが、「現状では90メートルまで打ち込むのは技術的に不可能」ともいわれている。
政府は埋め立て工事に要する総事業費を「少なくとも3500億円以上」と説明するだけで、明確な金額を示し切れていない。工期についてもあやふやだ。県の試算では、地盤の改良だけで1500億円、総工費は最大2兆6500億円まで膨らむ。
地元が強く反対する中、総工費や工期を明示できない状態で進められているのが辺野古の埋め立てである。このようなずさんな公共事業がかつてあっただろうか。
民意を踏みにじるだけでなく、莫大(ばくだい)な血税を浪費する荒唐無稽な工事である。直ちに中止すべきだ。