[新護岸から陸揚げ]工事止め公正な協議を - 沖縄タイムス(2019年6月12日)

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沖縄県名護市辺野古の新基地建設を巡り、沖縄防衛局は11日、新たな護岸から土砂の陸揚げを開始した。
この日、使用が始まったのは辺野古崎に近い南東部に造られた「K8」と呼ばれる護岸。陸揚げ用の桟橋として使用するため造成を急いでいた。
これまで土砂運搬用の桟橋として使っていたのは、大浦湾側に位置する北側の「K9」護岸だけだった。
船で運んだ土砂はこの護岸で陸揚げされ、トラックで辺野古側の埋め立て区域に投入されていた。
K9とK8の二つの護岸を併用することで運び込む土砂の量を増やし、工事を加速させる狙いがあるのは明らかだ。
だが、埋め立て区域を囲う護岸を陸揚げの桟橋として利用するのは「目的外使用」の疑いが濃厚である。
K8護岸は防衛局が形状を変更し、土砂を積んだ船が接岸できるようになっている。本来、工事の設計変更は知事への申請を必要とする。しかし今回、申請は出されていない。
県はK9の時と同じようにK8護岸利用についても違法性を指摘し、工事中止を求める行政指導文書を防衛局に出した。
岩屋毅防衛相は「具体的な陸揚げ場所は限定されているわけではなく、問題ない」としているが、県は「設計概要では陸揚げする場所を特定している」と反論する。
説明責任も果たさず、県の行政指導を無視し続ける政府の姿勢は尋常ではない。

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K8の全長は500メートルになる計画だが、近くに生息するサンゴの移植許可を県からもらえなかったため、250メートルだけ建設して使うという強引さである。
海流の変化によるサンゴへの影響が懸念される中、防衛局は途中までなら移植せず整備が可能と押し切ったのだ。
公有水面埋立法は、環境保全への十分な配慮を求めている。
埋め立て承認権者の県は、これまで防衛局に対し環境保全措置が十分でないとして何度も行政指導を行ってきた。だが政府の一方的な法令解釈によって工事が強行されているのが現状だ。
県民投票の結果を受けて玉城デニー知事が工事の中止と一定期間の協議を申し入れたのに対し、対話を拒否し続けているのは政府の方である。 このような埋め立て事業が果たして過去にあっただろうか。

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岩屋防衛相は「一日も早い米軍普天間飛行場の返還を実現するため」だと言う。
この言い方は実質を伴わない表面的な言葉になってしまった。「一日も早い」とはいったい何を意味するのか。
埋め立て予定海域の東側に存在する軟弱地盤の改良工事によって、新基地建設が長期化するのは避けられない。
その工期や総事業費さえ明らかにされていないのである。
政府が進めている強権的な土砂投入は、地方自治を破壊し、ウチナーンチュの尊厳を踏みにじる行為に等しい。