週のはじめに考える やっぱり辺野古はダメ - 東京新聞(2019年12月15日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019121502000166.html
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米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)移設のための辺野古新基地建設は、土砂投入開始から一年。反対運動は衰えません。あらためてその訳を考えます。
「民主主義を壊すな」「税金の無駄遣いをやめろ」-。沖縄県名護市安和(あわ)の琉球セメント桟橋前。百数十人が歩道を練り歩き、声を上げました。十月下旬にあった基地反対派市民による「ストップ辺野古-連続五日大行動」。桟橋は近くの鉱山で採掘した土砂を同市辺野古海上搬送する拠点です。抗議活動で五日間は土砂を船に積み込むダンプが一台も桟橋に入れず、工事は大幅に遅れました。

◆いくつもの矛盾
「市民が力を合わせれば国の事業も止められる」。川崎市から駆けつけた元小学校教諭海法(かいほう)潤二さん(71)は、胸を張って話します。
辺野古の埋め立て開始は、昨年十二月十四日。建設に反対する玉城デニー氏が与党系候補に圧勝した知事選から二カ月半後です。安倍晋三首相は最初の玉城氏との会談で「県民の気持ちに寄り添う」としつつ、県が打ち出した辺野古の海の埋め立て承認撤回に対しては、防衛省の不服申し立てを国土交通相が認めるという「力業」を使って無効化しました。
沖縄ではことし二月に県民投票、四月に名護市を含む衆院沖縄3
区の補選、七月に参院選沖縄選挙区と、新基地の是非を争点とする投票が行われ、そのすべてでも反対の民意が示されました。辺野古、安和などで市民らが連日座り込みや抗議をしているのは、民意が一顧だにされない怒りが原動力です。
在日米軍専用施設の七割が集中する沖縄で基地をたらい回しする理不尽さ、工事は極めて難しく、軍事的にも立地の優位性は不明。
新基地建設を巡るいくつもの矛盾はこの間、一向に解消されないどころか膨れ上がっています。

◆工期、工費示せず
現在埋め立てが進んでいるのは辺野古崎の南西海域ですが、北東の大浦湾側に「マヨネーズ並み」と形容される軟弱地盤があることを一月、政府が認めました。軟弱地盤は全埋め立て海域の四割に当たる約六十五ヘクタールに広がり、最深で水面下九十メートルに達しています。
政府は、七万七千本の砂の杭(くい)を打ち込んで地盤改良する方針ですが、現在の技術では深さ七十メートルまでしか工事できません。残り二十メートルは硬い粘土層と予測して進めるといいます。当然、地盤沈下が見込まれ、防衛省は十一月、沈下量は五十年間に一・三メートルとの試算を示しました。数値の評価は分かれますが、建設地には活断層があるとも指摘されており、軍事基地に適した場所でないのは明白です。
軟弱地盤の判明により政府は基地完成の時期、工費を示すこともできない。当初計画で工期八年、工費二千四百億円程度だったところ地盤改良に三年八カ月を見込むことになり、工期は最短でも十二年近くに延びています。護岸着工の二〇一七年を起点とした場合、完成は二九年ごろ。工費については県が当初の十倍を超える二兆六千五百億円と見積もっています。
その間、市街地に囲まれた普天間飛行場は返還されないのか。政府は、普天間の危険性除去のため「辺野古移設が唯一の解決策」と言い続けるのでしょうか。
東アジアの安全保障環境は、米国と中国、ロシアとの関係悪化、北朝鮮の核廃棄協議の停滞など不透明な状況が続きます。ただ、各国のミサイル開発が焦点となる中で上陸部隊の海兵隊を沖縄で維持する意義について日米両政府から明確な説明は聞こえてきません。
普天間移設とは切り離した計画とはいえ、二四年には五千人規模の在沖縄海兵隊のグアム移転が始まる見通しです。一方トランプ米政権は、在日米軍駐留経費負担を四倍以上にするよう求めているといいます。大幅増額に応じる日米安全保障条約上の義務はないものの、米側の要求は、沖縄にとっての真の負担軽減策を日米が協議する好機。その中で、普天間の閉鎖とともに新基地建設を凍結する道を見つけるのが、県民に寄り添うことになるはずです。

◆抜本的見直しを
現在の埋め立て海域は全体の四分の一。希少なサンゴ類もこの海域には多くありません。埋め立て前への復旧は難しくとも、新基地建設とは別の利用方法を探ることは可能では。沖縄県は、軟弱地盤の存在などを理由に行った埋め立て承認撤回の有効性について政府と法廷で争っています。地盤改良に関して政府は、県に設計変更を認めてもらわなければなりませんが、県は許可しない方針です。
県や県民が抵抗をやめないのは新基地建設が矛盾に満ち、自己目的化しているのが明らかなため。沖縄との間の対立、分断解消は政府の務めです。冷静な目で事業の抜本的見直しをすべきです。