[辺野古埋め立て遅れ]ずさんな計画中止せよ - 沖縄タイムス(2020年4月10日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/558435
http://archive.today/2020.04.11-004253/https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/558435

名護市辺野古の新基地建設で、辺野古側海域で進められている埋め立て工事の終了時期が予定の今年8月末から約1年遅れることが判明した。
新基地建設を巡っては、大浦湾側の軟弱地盤の存在が明らかになっており、政府は工期を当初の8年から12年に延ばし、工費も約2・7倍の約9300億円に変更した。
防衛省辺野古側の工事の遅れは、全体の工期や工費に影響はないとするが、同省が挙げる「天候」や「諸要因」で今後も計画に遅れが出る可能性がある。
政府は世界一危険といわれる米軍普天間飛行場の「危険性の除去」を新基地建設の理由に挙げる。しかし、計画通りに進んだとしても普天間の返還時期は2030年代半ばに大幅にずれ込むことになる。1996年の日米の返還合意から12日で24年となるが、危険性は依然放置されたままだ。
工期の変更に加え、巨額な税金がかかる異様ともいえる工事はいったん止めるべきである。
軟弱地盤の改良を議論するため政府が設置した技術検討会が、大浦湾の最大深度90メートルに存在する「B27」地点について「再検討しない」と結論付けたばかりである。
専門的な知見で技術的な観点から客観性を持たせるはずの検討会は、防衛省の見解を追認し、その役割を果たさなかった。
地盤改良には設計変更申請が必要だが、県は承認しない構えだ。難工事が予想されており、防衛省は申請自体をやめるべきだ。

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沖縄防衛局が、大浦湾側で未着工の護岸・岸壁の6工事の契約を3月末までに打ち切っていたことも明らかになった。
軟弱地盤の存在が影響したとされるが、護岸や岸壁の本体工事に着手できていないにもかかわらず、掘削調査などに計約292億円が業者に支払われていた。
しかも2014年度当初の契約額より最終契約額が大幅に増えている工事が2件あった。「埋め立てありき」の姿勢が浮き彫りになった形で、計画の見通しの甘さが露呈したといえる。税金の使途について、防衛局は詳細に説明する責任がある。
沖縄を含め日本全体が新型コロナウイルス感染拡大という未曽有の危機に直面している。経済や生活が打撃を受ける中、こうした時期に多額の税金を投じ、民意に反する新基地を造ることに国民の理解が得られるとは思えない。

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県が設置した有識者でつくる「万国津梁会議」は、新基地建設計画を軟弱地盤が明らかになったことで「完成は困難」と結論付けた。
普天間飛行場の危険性の除去と返還に向けた方策としては、在沖米軍兵力を日本本土を含む県外・国外に分散しながら、米軍基地の整理縮小を加速させることを提唱している。
県にはこの提言をどう生かしていくかの戦略が求められている。新基地建設計画のずさんさが露呈する中、提言を全国の課題として、再浮上させる必要がある。