[大弦小弦]いまだ道路に埋まる遺骨 - 沖縄タイムス(2019年6月13日)

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西海岸道路と国道58号をつなぐ浦添市道「牧港港川線」に、初代港川区長・銘苅太郎さんの遺骨が戦後74年間も埋まったままだ。太郎さんのおいにあたる港川自治会の銘苅全郎会長(76)を取材した。よく利用する地元の道路の話に驚いた

▼太郎さんは1945年の米軍上陸直後に戦死。親族は戦禍から逃れるため、一時的に遺体を埋めたつもりだったが、戦後、港川に戻ると軍道(米軍キャンプ・キンザーの北側進入路)として強制接収されていたという

▼軍道は2013年に地権者46人に返還された。国が費用負担する原状回復措置で遺骨も収集できたはずだが、返還前から生活道路として利用されていた経緯などもあり、市は国に要請しなかった

▼現在は、西海岸道路開通に伴い交通量が急増。マンションの建設ラッシュ、企業の工場や大型商業施設の開業でさらに混雑も予想される。道路幅が狭くて歩道もなく、市は都市計画道路として整備する方針だ

▼遺骨の場所は特定されている。整備の際に収集予定だが、用地取得のめどが立たず進まない。地権者の高齢化や長年放置された行政への不満などが複雑に絡んでいるからだ

▼今も各地に埋もれている未解決の戦後処理の一つ。移りゆく景色と都市化の喧噪(けんそう)の中、アスファルトの下で眠り続ける太郎さんに一日も早く光を見せたい。(吉川毅)