児童虐待 社会を根元から変える - 東京新聞(2019年6月7日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019060702000153.html
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親の体罰禁止を明記した児童虐待防止法などの改正案が今国会で成立する見通しだ。四月の本欄の連載で親が孤立して虐待に至らぬよう社会で支える必要性を訴えた。法成立を前に、繰り返したい。
東京都目黒区の船戸結愛(ゆあ)ちゃんと千葉県野田市の栗原心愛(みあ)さん。幼い命が失われ、国は法改正に動いた。その事実を重く受け止め実効性のある取り組みを進めなくてはならない。
法案には子どもの転居の際に児童相談所間の引き継ぎを徹底することや、学校の教員などが児童の秘密を漏らしてはならないことが盛り込まれた。事件の教訓がそのまま条文となった。
だが中核市での児童相談所の設置の義務化は見送られるなど、具体的にどこまで安全網が強化できるか不透明だ。DV担当機関と児童相談所の連携強化も盛り込まれたが、国会審議では、DVの対応などにあたる婦人相談員の八割が非常勤であることが課題として取り上げられた。
貧困問題なども影を落とし家族の問題が複雑化する中で、相談や対応にあたる人々にはますます豊かな経験が求められる。適切な待遇や人員が伴わなければ、法はかけ声倒れに終わるだろう。
連載型社説「虐待なくすために」(四月九~十三日)では小児科医や保健師などが連携し、親が虐待に至らぬよう早期に支える高知県での取り組みを紹介した。法案は、子育てに困難を抱える保護者の支援について、法改正を含めて検討し、必要な措置を取ることを求めている。
連載を読んだ読者からも提案が寄せられている。子育て支援センターで勤務する保育士は、自分の長所を見つけるために親同士が話し合うプログラムに手応えを感じているという。岐阜県大垣市で幼児教室を開いている柴田よしえさんは幼児教育無償化で預けられる子どもが増え、保育士の心身の余裕がなくなることを懸念する。
愛知県で子育て中の女性は、企業が親子がふれあえる機会を率先して設けることを望む。
夫が仕事で会話もままならない中、数年前までは、精神的に不安定な状態に陥るときもあったという。「今の子たちが何十年先の日本を支えます。それは未来の企業を支えるという事ではないかと思います」と手紙にはつづられていた。
虐待をなくすためには、社会を根元の部分から変える挑戦が求められている。