<金口木舌>引きこもり - 琉球新報(2019年6月7日)

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高校の頃、自室に引きこもっていたことがある。人間関係や成績などで小さな悩みが積み重なり、数カ月間不登校になった。クラブ活動など教室とは違う人間関係を手掛かりに、再び登校できるようになった
▼出会いやタイミングに恵まれなければ孤立から抜け出せなかった恐れもある。不登校に限らず、成人してからも社会的に孤立してしまう人は多い
内閣府の調査によると半年以上にわたり家族以外とほとんど交流せず、自宅にいる40~64歳の引きこもりの人は全国で61万3千人(推計値)いる。男性が大半で、きっかけは退職が最も多く、就職氷河期を経験したことなども背景にあるとみられる
▼引きこもり当事者や家族会が5月末以降、相次いで声明文を発表した。川崎市で児童らが殺傷された事件の容疑者が引きこもりがちだったことに関連し、犯罪と結びつけるような報道で誤解や偏見が広がる恐れがあると訴えた
▼ジャーナリストの池上正樹さんは「引きこもりの人が事件を起こすのはレアケース」と指摘し「当事者は仕事をせず、社会に出ないことを批判され続け『自分は駄目なやつ』『生きる権利がない』と思い込まされてきた」と語る
▼孤立から抜け出せない人が増えている原因の一つに、社会の偏見や不寛容がないだろうか。自分や親しい人がいつでも当事者になり得る。それを忘れずにいたい。