令和の幕開け 真の平和と共生の実現を - 琉球新報(2019年5月1日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-911671.html
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令和の時代の幕開けを新たな決意で迎えたい。
元号は古代中国が発祥で「皇帝が時をも支配する」との考えに基づく。日本でも天皇が定め、権威を高めてきた歴史がある。新憲法下で天皇は象徴となり主権は国民に移ったが、「一世一元」制で天皇と結び付いた元号がなぜ必要かという根本的議論は必要だ。
とはいえ元号を生活に根ざした文化と捉えれば、新元号のスタートは人々の願いを結集する機会となり、人々の希望につなげる力にもなる。
安倍晋三首相は令和には「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つ」という意味があると述べた。このほかにも個々人は令和にさまざまな意味や願いを込めているに違いない。大切なのは、新しい時代への個々の願いを交差させ、時代の課題を確認し合い、解決を目指すことである。それが希望につながる。
日本は元号と西暦を併用する世界でも特異な国だ。自国の文化を大切にしつつ、国際社会とも協調するバランス感覚の表れともいえる。その感覚を生かし、国内外の課題に目を向けることが肝要だ。
振り返れば平成は多くの重い課題を残した。国際社会を見ると、紛争やテロは頻発し、2016年末時点で6500万人以上が戦争や暴力、迫害で家や土地を失っている。
経済格差は急速に拡大し、世界で最も裕福な8人と世界の半分の人口の資産額がほぼ同じだ。栄養失調の人は15年から増加に転じ、17年には8億2100万人いるという。
一方で軍事費は1兆7千億ドル以上に膨らみ、東西冷戦終結後、過去最高だ。全世界の人道援助に必要な金額の約80倍に当たるという。軍事費削減や税収拡大などに取り組めば、世界の最貧困層の4分の3を救えるとの推計もある。
低所得層の不満の増大は自国中心主義や排外主義の原動力にもなっている。日本も例外ではない。高齢者の増加と働き手世代の激減により、外国人労働者の受け入れ拡大を図っているが、排外主義は根強い。標的は外国人だけでなく、さまざまな少数者に及び、米軍基地に批判的な沖縄の人々も含む。沖縄は過重な基地負担を強いられたままだ。
これらの課題を解決する理念のキーワードは「平和」と「共生」である。戦争や紛争をせず軍縮を進め、人々が多様性を認めながら経済的にも支え合う世界像だ。令和は、それを実現する時代にしたい。
平和学者ヨハン・ガルトゥング氏は領土問題など東アジアの紛争の火種を取り除き戦争を回避する具体策として東アジア共同体を提唱する。沖縄をその拠点に位置付ける。
沖縄はこうした真の意味での平和と共生を実現する明確なビジョンを持つべきだ。米軍基地などの軍事力による平和ではなく信頼に基づく対話と交流で問題を解決する実践の場所として貢献することを目指したい。そのためにも自己決定権の確立は不可欠だ。