<金口木舌>令和の子ども - 琉球新報(2019年5月1日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-911670.html
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二つ前の改元時の話である。1927年、元号でいえば昭和2年に「昭和の子供」という歌が生まれた。岡山県出身の童謡作家、久保田宵二の詞に「お山の杉の子」で知られる佐々木すぐるが曲を付けた

▼新時代の幕開けを感じさせる明るく軽快な曲調に乗せて「昭和、昭和、昭和の子供よ、僕たちは 大きなのぞみ 明るい心」 と歌う。最近の童謡集には載っていないので、忘れられた歌と言っていい
▼この歌がラジオから流れた頃に生まれ育った子どもたちを待ち受けていたのは戦争だった。時代は「大きなのぞみ 明るい心」を押しつぶす方向へと向かった。「昭和の子供」が健やかに育つ社会を築けなかった
▼平成に生まれた子は幸せだろうか。 自信を持って「あの時代とは違う」と言い切れそうにない。この沖縄でも貧困と虐待にあえぐ子どもがいる。この社会の病理を治癒できぬまま、平成の時代は終わった
▼晴れやかな空気と共に令和の時代がやってきた。浮き立つ気分を抑え、これだけは誓いたい。子どもたちを戦争に巻き込んではならない。飢えと暴力から守らねばならない。大人たちはこの責務に正面から向き合おう
▼間もなく「令和の子ども」の産声を聞くだろう。新たな時代の海に乗り出す新しい水夫の誕生だ。荒波を乗り越えてゆけるよう導くのは昭和、平成生まれの航海士の役目である。