<金口木舌>過去に目を閉ざす者 - 琉球新報(2024年5月4日)

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「昭和レトロ」がブームだ。昔懐かしい喫茶店やテーマパークが人気を博す。4月29日の「昭和の日」もあり、脚光を浴びた。一方、現在の元号「令和」はいつの間にか1日で5年の節目を迎えていた
▼令和を強く意識させられたのは最近のこと。文部科学省が来春から中学校で使う歴史教科書の検定で「令和書籍」の2冊を追加合格にした
▼令和書籍は明治天皇のやしゃごで作家の竹田恒泰氏が代表を務める。竹田氏はユーチューブチャンネルで、沖縄について「かなり紙面を割いた」と主張する
▼だが、沖縄に関する記述は重要な側面が欠けている。沖縄戦での旧制中学生らの動員を「志願のかたち」と表現しつつ、天皇の戦争責任や戦後に沖縄の軍事占領を望んだ「天皇メッセージ」には触れずじまい
▼「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目になる」。ワイツゼッカー元ドイツ大統領の有名な言葉だ。「新しい戦前」を想起させる軍備増強が沖縄で進む。沖縄の不幸な歴史に目を閉ざせば、今の沖縄の苦悩も見えない。件(くだん)の教科書はどうだろう。