[大浦湾に杭6万本]環境アセスをやり直せ - 沖縄タイムス(2019年2月4日)

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名護市辺野古の新基地建設工事を巡り、政府が軟弱地盤の改良工事に約6万本の砂の杭(くい)を打ち込む工法を検討していることがわかった。
杭打ちは大浦湾の埋め立て予定海域の広範囲にわたる。工期が長期化し、費用も膨れあがるだけでなく、環境に致命的ダメージを与える懸念が拭えない。
水深30メートルの海底に深さ40メートルにわたって地盤の強度が「ゼロ」のマヨネーズ状の軟弱地盤が広がる。地盤改良には70メートルの砂の杭を打たなければならず、難工事となることが予想される。
防衛省沖縄防衛局は護岸部分と埋め立て部分に分けて工法を検討しているという。
護岸部分は軟弱地盤に締め固めた砂杭(すなぐい)を大量に打ち込んで密度を高め、地盤を強化する「サンドコンパクションパイル」、埋め立て部分は地盤の液状化を防ぐため砂杭で水分を抜く「サンドドレーン」と呼ばれる工法である。
大量の砂をどう調達するか。県外からの砂には外来種混入の恐れがある。水質の濁りも避けられないだろう。
サンドコンパクションパイル工法では砂だけでなく、金属の精製過程でできる「スラグ」を混ぜることを想定していることも問題だ。
鉄分がにじみ出れば水質が変化する。専門家は「サンゴは動けず水質の変化を直接受け、死滅する可能性がある」と警告する。
辺野古・大浦湾の自然環境や生物に取り返しのつかない工事となることは間違いない。即刻中止を求める。

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防衛局は2014年から16年にかけて実施したボーリング調査で軟弱地盤の存在を確認している。
市民らの情報公開で18年に明らかになった。しかし政府が軟弱地盤の存在を認めたのはついこの間である。
先月30日の衆院代表質問で、安倍晋三首相は大浦湾が軟弱地盤で、地盤改良が必要である、などと答弁した。31日には県に設計変更を申請することを明らかにした。
玉城デニー知事は新基地建設反対が選挙公約であり、変更申請は認めない構えだ。
防衛局は当初、大浦湾側から埋め立て作業を始める計画だったが、辺野古側から着手している。
見通しの立たない軟弱地盤の問題を先送りし、埋め立ての既成事実を積み重ねるために辺野古側の浅い海域から手掛けたのだろう。不誠実極まりない対応だ。

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政府は工期や費用について明らかにすることができない。県は工事に13年、費用は2兆5500億円と試算している。軟弱地盤の改良工事が難航すれば工期、費用とももっと膨らむに違いない。
工事に際して政府が示しているのは12年に県に提出した環境影響評価(環境アセス)の評価書を手直しした補正評価書である。ジュゴンの絶滅リスクを低く見積もるなど補正後も問題が多かった。
軟弱地盤は補正段階で想定していなかった重大な事実だ。大規模な杭打ちが行われるのである。政府は環境アセスをやり直すべきである。