9条俳句、ようやく掲載 拒否から4年半 さいたま市教育長が作者に謝罪 - 東京新聞(2019年2月1日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201902/CK2019020102000138.html
http://web.archive.org/web/20190201041357/http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201902/CK2019020102000138.html
憲法九条を詠んだ俳句がさいたま市の公民館だよりに掲載されなかった問題で、同市の細田真由美教育長は三十一日、作者である同市の女性(78)に直接謝罪し、二月一日発行のたよりに句を掲載すると伝えた。公民館が掲載を拒否してから四年半。最高裁まで争った訴訟を経て、ようやく正式な発表の場を得た。 (井上峻輔)
細田教育長は、女性が所属する句会の活動場所である同市の三橋公民館で女性と面会。「心よりおわび申し上げます」と謝罪し、句を最新のたより二月号に掲載すると説明した。
女性は「ほっと、安心しています」と話した。
二月号では、女性が詠んだ「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」の句を紙面の最後の欄に掲載。「判決を真摯(しんし)に受け止め、今後はこのような事態が生じないように努める」などとした市側の見解も添える。
女性の句は句会で、たよりの二〇一四年七月号の掲載句に選出されたが、公民館側が同年六月に「世論を二分する内容で、掲載は公民館の公平性、中立性を害する」として掲載を拒否。女性は一五年に句の掲載と損害賠償を求め、市を提訴した。
最高裁が昨年十二月に女性と市双方の上告を退け、「作者の人格的利益を侵害した」などとした二審東京高裁判決が確定。判決では掲載義務はないとされたが、市は上告棄却後に句を掲載する意向を示していた。一連の問題は、本紙の読者投稿「平和の俳句」(二〇一五~一七年)が始まるきっかけになった。

◆女性「思い煩わぬ日なく」
公民館だより二月号はB4判で両面刷り。サークル体験や自然探索の案内が目を引く中、「梅雨空に~」の句は裏面の一番下に小さく載っていた。
「ここに来るまでに梅雨空を何回超えてきたか」
三十一日夕、作者の女性は翌日から回覧される印刷したてのたよりを手に取り、つぶやいた。
教育長の謝罪には「四年半にわたり、このことを思い煩わない日はなかった。ちゃんと受け止めて理解してくれたのかなと大変うれしく思う」と応じた。穏やかな雰囲気で「これからも公民館をのぞきに来て」とも呼び掛けた。
今でも月に四回は公民館を訪れる。「私たち高齢者にとっては、自由にのびのびと学べる場所」。そんな当たり前の環境を今後も保障してほしいと願う。
発行部数わずか二千部のたよりに載るはずだった句は、掲載されなかったことによって全国に知られるようになった。「詠み手を離れ、あっちこっちを飛び回っちゃった」
それは望んでいた発表の仕方ではなかった。四年半の時を経て「これでようやく正式な発表になったかな」。
たよりの片隅にある自身の句を見つめ、安心したようにほほえんだ。