辺野古で新たな訴訟 撤回の正当性巡る審理を - 琉球新報(2019年8月9日)

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名護市辺野古の公有水面埋め立て承認の撤回を取り消した国土交通相の決定は違法だとして、県は国の裁決の取り消しを求める抗告訴訟那覇地裁に提起した。故翁長雄志前知事による承認撤回の適法性が、初めて司法の場で正面から問われる裁判だ。
仲井真弘多元知事が「県外移設」の公約を翻して国の埋め立て申請を承認したのは2013年。申請時の国の説明とは異なる事態が現在までにいくつも生じている。最たるものが大浦湾側に広がる軟弱地盤だ。
海底の地盤が軟らかく、現行の工法では埋め立て後に地盤沈下液状化が起き、建造物が傾く恐れがある。防衛省はボーリング調査で把握していながら、今年1月まで軟弱地盤の存在を隠してきた。
政府は地盤を強化する改良工事で対応する方針だが、国内には最大で深さ70メートルを施工できる作業船があるだけで、最深部で海面から90メートルに達する大浦湾の軟弱地盤は改良工事の実績がない。工期の長期化や費用の増大がどうなるのかいまだに見通せない。
仲井真県政時の埋め立て承認に際して県は「工事の実施設計について事前に県と協議を行う」と留意事項に記載していた。沖縄防衛局は事前協議が完了しないうちに、汚濁防止膜の海上設置や護岸工事を進めてきた。
県は軟弱地盤や活断層など承認後に発覚した問題と、留意事項違反を根拠に、埋め立て承認の撤回を決めた。
工事を止められた防衛省は同じ内閣の国土交通相に救済を申し立て、国交相防衛省の言い分通りに撤回の効力を取り消す裁決を下した。昨年12月に海域への土砂投入を始め、移設計画の既成事実の積み上げを急いでいる。
「身内」の手続きで撤回を無効にした国の法律論は違法ではないのか。撤回を主張する県の正当性を裁判所はどう見るのか。政治的権力の干渉を排除した司法の場で、公正な判断が示されるべきだ。
これまでの裁判での国側の主張を踏まえると、県の訴訟資格を争う入り口論に終始することが懸念される。裁判所まで県の訴えを「門前払い」にして実質的な審理を避けるのなら、時の政権への迎合にしか映らない。
埋め立て承認の撤回方針を表明した翁長氏が直後の昨年8月8日に急逝した後も、権限を委任された謝花喜一郎副知事らが撤回手続きを完遂させた。今年2月の県民投票では投票者の7割超が埋め立てに反対した。撤回の判断を、多数の県民が支持していることが証明された。
日本政府が米国との約束を絶対視して沖縄の民意を顧みることがない中で、県民が司法に望むのは、承認撤回の中身に立ち入った審理だ。
裁判官は独立し、いかなる国家機関からも指揮命令を受けることはない。民主主義や地方自治を支える司法の存在意義を示してもらいたい。