地方発ドキュメントに光 「座・高円寺」節目の10年 戦争テーマ - 東京新聞(2019年2月4日)

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テレビと映画の垣根を越えたドキュメンタリー映画祭「座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル」が10年を迎えた。節目の10回目は「戦争」がテーマ。6日~11日、東京都杉並区の座・高円寺を会場に、戦前の従軍記録映画や最近のテレビ番組など18作品を上映する。関係者は、地方局制作のドキュメンタリー番組が映画化される近年の潮流をけん引してきたと自負する。 (宮崎美紀子)
「テレビのドキュメンタリーは一、二回の放送で消えてしまう。昔の名作も新しい作品も幅広く集めてドキュメンタリーに親しんでもらおうと始めたんです」。著名なドキュメンタリーのカメラマンで、同フェスのプログラムディレクター山崎裕さん(78)=番組制作会社ドキュメンタリージャパン=は振り返る。
約十年前、ドキュメンタリージャパンは、座・高円寺の館長だった劇作家・斎藤憐さん(故人)から「映像イベントをやりたい」と相談を受けた。同社がやれることといえば、ドキュメンタリー。テレビのドキュメンタリーが減っていくことへの危機感もあった。こうして二〇一〇年、映画もテレビも同等に扱う同フェスが誕生。年一回のペースで開催されてきた。「ほそぼそですが、よく十年も続いた」と山崎さんは感慨深げに話す。
当時はテレビドキュメンタリーを劇場で見る機会はほとんどなかったが、東海テレビなど地方局が番組の映画化に力を入れ、映画館側も一定の集客が見込めるドキュメンタリーに注目するようになった。阪神大震災東日本大震災原発事故など相次ぐ厄災が映像制作者を刺激し、多くの作品が生まれた。時代がドキュメンタリーを求めたのだ。
特集上映は「表現者」「アジア」など毎年テーマが変わる。山崎さんは、今年のテーマ「戦争」について「安全保障の名のもとに憲法が拡大解釈されているが、本当にそれでいいのか?」と問い掛ける。
オープニングは四時間半の大作「東京裁判」が飾る。是枝裕和監督が手掛けたフジテレビの「シリーズ憲法~第9条・戦争放棄『忘却』」(二〇〇五年)は、現在の改憲の動きを見越したような作品だ。戦意高揚映画なのに厭戦(えんせん)的と見なされた「戦ふ兵隊」(一九三九年)、民間フェリーの“徴用”に斬り込んだ名古屋テレビ「防衛フェリー~民間船と戦争~」(二〇一八年)…。考える材料はそろっている。
全作品に制作者、関係者のトークが付いているのも同フェスの特徴。「防衛フェリー」の上映に登壇するノンフィクション作家の吉岡忍さん(70)は「地方局のドキュメンタリーは、なかなか地元から出られないが、このフェスが新しい流れを作り出してきた」と評価する。
上映作品の詳細は同フェスの公式サイトへ。「東京裁判」は当日二千円、それ以外は同千五百円。三回引換券は三千五百円(販売は五日まで)。電話予約は座・高円寺チケットボックス=03(3223)7300、月曜定休=へ。

座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル特集上映作品  タイトル(制作年、制作国または放送局)

東京裁判 (1983年、日本)

戦場のフォトグラファー ジェームズ・ナクトウェイの世界 (2001年、スイス)

Little Birds-イラク 戦火の家族たち (2005年、日本)

沖縄スパイ戦史 (2018年、日本)

なぜ隣人を殺したか~ルワンダ虐殺と煽動ラジオ放送~ (1998年、NHK)

戦ふ兵隊 (1939年、日本)

沖縄のハルモニ 証言・従軍慰安婦 (1979年、日本)

防衛フェリー~民間船と戦争~ (2018年、名古屋テレビ

ベトナムから遠く離れて (1967年、フランス)

砲弾の炸裂するなかで~ベイルート戦場の街~ (1984年、TBSテレビ)

蟻の兵隊 (2005年、日本)

人間爆弾「桜花」-特攻を命じた兵士の遺言- (2014年、フランス)

ヒロシマ ナガサキ (2007年、アメリカ)

ミリキタニの猫 特別編 (2017年、アメリカ・日本)

未帰還兵を追って タイ編/マレー編 (1971年、日本)

シリーズ憲法~第9条・戦争放棄「忘却」 (2005年、フジテレビ)

アルマジロ (2010年、デンマーク

戦場で書く~作家火野葦平の戦争~ (2013年、NHK)