[辺野古新区域に土砂]「民意」は埋められない - 沖縄タイムス(2019年3月26日)

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辺野古新基地建設を巡り防衛省沖縄防衛局は25日、新たな区域に土砂投入を始めた。
辺野古の浜では「県民大行動」が開かれ、主催者発表で約700人が参加した。
プラカードや横断幕を掲げ、「民意を無視する暴挙を許さない」などと安倍政権を批判した。集会の後、カヌーチームが新区域にこぎ出し、海上保安官ともみ合いになりながら、土砂投入に抗議した。
投票総数の7割超が「反対」という圧倒的な意思を示した県民投票から1カ月。安倍晋三首相は玉城デニー知事が要請した工事の1カ月程度の中止と協議を無視した。
安倍政権の思い上がりというほかない。
岩屋毅防衛相は25日の会見で「抑止力の維持」と「沖縄の負担軽減」の両方を満たすのが新基地で「唯一の解決策」と主張、「一日も早い普天間の返還」と何度も発言した。
だがそもそも抑止力の維持と負担軽減を沖縄だけで両立させることに無理がある。なぜ九州ではだめなのか、政府はちゃんと説明責任を果たしたことがない。
菅義偉官房長官も同日の会見で「普天間の一日も早い全面返還を実現するよう」と強調した。
軟弱地盤の改良のため、埋め立て工事の長期化が避けられなくなっている。
普天間の返還見通しが立たない状況にありながら、一日も早い普天間の返還という言葉を繰り返すのは、移設計画が破綻したことを示すと同時に、それを覆い隠そうとするもので説得力に欠ける。

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今回土砂投入を始めたのは、埋め立て海域南側の護岸で囲まれた約33ヘクタールの区域。昨年12月から土砂投入が続いている約6・3ヘクタールの西に隣接する。二つの区域が完全に埋め立てられれば、全体の4分の1に相当する。
政府の土砂投入は新基地が実現できるかわからないまま、遮二無二埋め立てを進めようとしているとしかみえない。埋め立て工事はもともと大浦湾側から始める予定だった。それができなくなったのは埋め立て承認時には判明していなかったマヨネーズ並みといわれる軟弱地盤の存在である。
政府は砂の杭(くい)約7万7千本を打ち込んで地盤改良するというが、最深90メートルの所もあり、世界で過去に例のない難工事となるのは間違いない。
改良工事に向けた設計変更もできていない状態である。想定通りに進む保証はなく、政府は工期、総事業費を示すことができない。
大浦湾埋め立てには着手できておらず、「新基地完成に一日たりとも近づくものではない」(県)のである。

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43万4273人もの県民が投票場まで足を運び、「反対」の意志を示した意味は重い。安倍首相が「真(しん)摯(し)に受け止める」という言葉とは裏腹に、県民投票結果を一切顧みず工事を強行していることに、県内ではこれまでとは異なる失望や怒り、憤まんが渦巻いている。
安倍政権は県民投票で圧倒的に示された民意を甘くみていないか。
民意は埋められない。