ブラック校則に悩む現場 頭髪や服装、厳罰化の動きも 「自主性が育たない」 - 西日本新聞(2019年2月3日)

https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/484069/
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学校が合理的な理由を示さないまま、生徒に頭髪や服装を細かく強いる「ブラック校則」。北九州市で1日から開かれている日教組の教育研究全国集会でも各地から報告があり、教員たちが意見を交わした。選挙権年齢を18歳以上に引き下げるなど生徒の主権者意識を育て、自主性を養う動きが強まる一方、校則で縛る厳罰化の動きもあるという。生徒も納得できる校則にどう結び付けていくのか。
「生徒と一緒に戦うしかない」。鹿児島県の40代の高校教諭は、生徒を校則で縛り付ける他の教員の態度に疑問を呈した。
勤務校では、眉にかかるほど前髪を伸ばすのは禁止され、冬でも授業や体育館の集会で膝掛けを使えない。教員ごとに異なっていた指導内容も統一化され、「前髪は短すぎても駄目」「指定の靴下を着用し、ふくらはぎまで伸ばすこと」とルールが増えていった。ルールから逸脱した生徒を「ばか」と叱る教員もいた。
不満を募らせた生徒は、「細かな規定は非常に理不尽」「先生の言葉に傷つき、自信を失う」と総会で問題提起し、学校に改善を求めた。学校側は教師の暴言は謝罪したが、校則の見直しは「まずはルールを順守せよ」と、はねつけた。
生徒の間には、「絶対に聞き入れてもらえず、言うだけ状況が悪くなる」と現状変革に対する諦めムードも漂い、報告した教師も学校で孤立しているという。別の教師は「新聞への投書など社会に訴える手もある」と提案した。
神奈川県の高校教諭、辻直也さん(35)は、有志とともに県内の公立高校に生徒指導の内容を尋ねる開示請求を行い、その集計結果を報告した。
2017年度の頭髪検査では、164校のうち117校(72%)で規定があった。うち37校(32%)は生来の髪の色を申告する「地毛証明書」の提出を義務付け、34校(29%)は黒から金色まで髪の色見本を段階的にまとめた「レベルスケール」を用いて髪の明るさを調べていた。
高校現場では厳罰化が進む傾向があり、「押しとどめるだけで精いっぱい」と辻さん。全体の44校(27%)は違反した頭髪や服装の生徒を帰宅させる措置を行い、中には退学を迫る学校もあった。辻さんは「20人もの教員で生徒と保護者に退学を迫る学校もある」と述べた。
長野県の中学教諭、井出岳さん(44)は「奇抜な服装や髪形は生徒たち自身で気付き、改善し合う力がある。校則や活動を生徒に任せていかないと主権者意識は育たない」と指摘した。

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校則の厳罰化

子どもが先生に暴力を振るったり、窓ガラスを割ったりするなど校内暴力が深刻化した1980年代、学校現場では規律ある生活態度や服装など、校則を強化することで沈静化に努めた。ゼロトレランス(徹底した不寛容、厳罰主義)方式と呼ばれる。地域により異なるが、現在も厳格な校則を求める学校は各地にあるとみられる。