(政界地獄耳)安倍政権、責任は生ずるが責任取らず - 日刊スポーツ(2018年12月8日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201812080000182.html
http://archive.today/2018.12.08-002949/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201812080000182.html

★国内政治はさして審議もせず、強行採決で法案が可決。既に議会は不要だ。審議も議論も不要。なんでも政府与党が可決する。国民はスピード可決に安心だ。ところが、政府鳴り物入りで進めている原発輸出は失敗続き。政府や三菱重工業などの官民連合で進めていたトルコの原子力発電所の建設計画は断念することになった。

★首相・安倍晋三は20年の東京オリンピック(五輪)誘致の時「フクシマについてお案じの向きには私から保証をいたします。状況は統御されています。東京にはいかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも及ぼすことはありません」とアンダーコントロールを強調していたが、世界がそれを信頼しているのならば、日本と並ぶ世界有数の地震国・トルコの原発輸出は何の問題もなかったのではないか。安全基準の強化を受けた事業費の高騰で原発は採算をとるのが極めて難しくなったという。安全対策を整備するには採算が合わない。経団連を引き連れての俯瞰(ふかん)する外交の破綻だ。

★その経団連会長・日立製作所会長の中西宏明は日立製作所が英国で進めてきた原発建設計画が暗礁に乗り上げていると認めた。こちらも原発の安全対策で事業費が膨らむなど事業の採算性に疑問符が付いている。日本と原子力協定を結んで売り込んだ国はベトナムリトアニア、台湾、カザフスタン、ヨルダン、アラブ首長国連邦、インド。どれも進んでいるとは言い難い。政権は原発輸出をアベノミクスの成長戦略と位置付けていたが、世界の潮流とも逆行しているといえる。問題はこれを失敗と認めず交渉途中と言い張るところだ。「最近も首相が米トランプ大統領に売り込んでいた官民ファンドで進めるJR東海の子会社が主導するテキサス新幹線構想。これも進んでいない」(財界関係者)。官民は結構だが、税金投入して失敗は責任が生ずるもの。この政権は責任は生ずるが取らない。(K)※敬称略