入管法改正案 成立へ 与党、参院委で採決強行 - 東京新聞(2018年12月8日)

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外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案は八日未明、参院法務委員会で自民、公明の与党などの賛成多数で可決した。この後の参院本会議で可決、成立する見通しだ。医師や弁護士など専門性の高い職業に限定していたが、幅広い分野での受け入れに道を開く政策転換となる。立憲民主党など野党は、安倍晋三首相と山下貴司法相に対する問責決議案を提出して抵抗した。野党側は法案の問題点が浮き彫りになったとして、慎重な審議を求めたが、与党は採決を強行した。衆参両法務委員会での審議時間は計約三十五時間。これまでの重要法案に比べ、極端に短い。 (村上一樹)
与党側は七日に法案成立を図る方針だった。しかし、法務委員会での採決に先立ち、野党側が同日午後、山下法相への問責決議案を参院に提出したため、委員会は一時中断となった。問責決議案は自民、公明両党の反対多数で否決された。
立民などの野党は同日夜、安倍首相に対する問責決議案を参院に提出した。与党などの反対多数で否決された。
日付が変わった八日午前零時十分、再開された参院法務委員会で、横山信一委員長(公明党)は質疑の終局を宣言した。締めくくりの討論後、横山氏が採決すると宣言するのを阻止するため、野党議員はマイクを奪おうとした。横山氏はもみくちゃにされながらも、採決を強行した。
首相問責決議案の質疑で、立民の難波奨二氏は新たに設ける在留資格「特定技能」の技能水準について「改正案に具体例が出てこず、法案の中身はずさん極まりない。国会軽視も甚だしい」と批判した。
自民党岡田直樹氏は、改正案が外国人の受け入れ人数などを示していない点について「首相は法施行の前に制度の全体像を示すことを明言した。国会軽視という批判は当たらない」として擁護した。
改正案は、新たな在留資格として一定の技能が必要な業務に就く「特定技能1号」と、熟練技能を要する「特定技能2号」を設けることが柱。1号は在留期限が最大五年で家族は帯同できないが、2号は期限の更新と配偶者と子どもの帯同ができ、条件を満たせば永住にも道が開ける。外国人技能実習生から特定技能者への移行も可能となる。

外国人労働者拡大「政府に白紙委任
外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案は、在留資格の技能水準などを定めず、具体的な制度設計は法成立後の法務省令などで決める。法案には「法務省令で定める」との記述が三十カ所を超える。省令は国会審議を経ずに、政府の判断だけで決めることができるだけに、野党は「法案の中身を政府に白紙委任することはできない」と反発している。 (坂田奈央)
「具体的な内容が法務省令に委任されている箇所が目につく。分かりにくいように思われる」。自民党元栄太一郎氏は六日の参院法務委員会で、こうただした。法務委の理事を務める自民党の委員が、法案の分かりづらさを認めた発言といえる。
立憲民主党小川敏夫氏は七日の参院本会議で「法律が通った後にすべてを決めるのは白紙委任で、立法権の放棄だ」と指摘した。
省令で定めるのは、新たな在留資格を得る外国人の技能水準や、技能水準を判断する試験内容、法律で禁止した外国人への差別の具体的な内容など。政府は受け入れるのは技能を持った外国人だけで、単純労働を認めるわけではないとしているが、省令で技能水準を低くすれば、事実上の単純労働者の受け入れになる。
大島理森衆院議長は先月二十七日、改正案について「政省令事項が多岐にわたると指摘されている」と苦言を呈した。