「The Buck Stops Here」責任を取る政治家はいないのか [平安名純代の想い風] - 沖縄タイムス(2018年12月2日)

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「彼女の見解は、非常に説得力がある」
オバマ前政権の元高官に、玉城デニー知事が米ニューヨーク大学で11月11日に開いた講演のビデオを送ったところ、コーディネーターを務めた島袋まりあ同大准教授の総括について、そんな論評が返ってきた。
玉城知事は講演の中で、「沖縄がアメリカに米軍基地に関する苦情を訴えると、アメリカは日本政府に回し、日本政府は地位協定などを理由に切り捨てる」と強調。島袋氏はこれを「日米両国が設定した土俵で問題がたらい回しされ、沖縄の声がかき消されていく」と指摘した上で、「アメリカの政治の世界では、責任転嫁することを『Pass the Buck』という。沖縄はいわば『たらい(Buck)』だ。『The Buck Stops Here(たらいはここで引き受ける=私が責任を取る)』と主張する政治家はアメリカにも日本にもいない」と説明した。
「The Buck Stops Here」はトルーマン大統領をはじめ、これまで多くの歴代大統領が使ってきた米国ではなじみの深いフレーズだ。オバマ大統領は記者会見で「The Buck Stops with me(最終責任は私にある)」と訴えていたし、最近では責任転嫁するトランプ大統領を批判する決まり文句として、米メディアが「Pass the Buck」を多用する。
前述した元高官は「南北首脳会談が実現したのは『The Buck Stops Here』と『たらい』を引き受けた文在寅・韓国大統領の存在が大きかった」と指摘。同会談と米朝首脳会談の成功後、軍事力重視の米政府内に「対話」による外交を再評価する新たな変化が生まれているとも話してくれた。
確かに沖縄は今、名護市辺野古の新基地建設を巡り、後戻りできない事態へと追い込まれている。そうした状況下で、果たして具体策を伴わない「対話」で事態を動かせるのかと疑問視する人は少なくない。
しかし、私たちが直面している事態は、日米両政府が沖縄と「真摯(しんし)な対話」をせず、常に沖縄を「例外」とする状況を変えてこなかったから起きているのだ。
玉城知事は講演で「政府の扉と法律の門が閉じつつあるという厳しい現実に直面している。沖縄は一体いつまで政府の扉の前で待たなければならないのか」と訴えた。
たらい回しの現状に終止符を打つには「The Buck Stops Here」と責任を引き受ける政治家が必要だ。そのためには、政府に扉を開かせる国民の主体的な行動が必要なのだ。
朝鮮半島の和平へ向け、在米韓国人らは団結し、米政府の背中を押し続けた。対話の力を信じたからこそ、道を切り開けたのだ。沖縄の目の前で閉じられつつある政府の扉を開けるのは誰なのか。問われているのは沖縄だけではない。(平安名純代・米国特約記者)