辺野古工事 展望なき政府の強硬策 - 朝日新聞(2019年3月26日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13949718.html
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埋め立てを強行しても、いずれ行き詰まるのは目に見えている。政府は工事を止め、沖縄県が求める対話に応じるべきだ。
米軍普天間飛行場の移設計画で、政府はきのう、名護市辺野古沿岸部の新たな区域で土砂投入を始めた。2月の県民投票で反対が7割を超えたにもかかわらず、政府は昨年末に着手した工事を見直すことなく、今回、さらに広い海域の埋め立てに踏み出した。幾重にも民意を裏切る行為と言わざるを得ない。
沖縄県玉城デニー知事は先週、安倍首相と会談し、新区域での工事を見送り、1カ月程度の話し合いの場を設けるよう求めた。対話の環境づくりとして、県と国の法廷闘争を終わらせようという意向も示した。
しかし政府は「辺野古が唯一の解決策」との立場を崩さず、知事の訴えを一顧だにしなかった。この先、知事の理解なしに工事を続けることが困難なことは明らかなのに、どんな成算があっての判断なのか。
問題は、まだ埋め立てが始まっていない海域で確認された「マヨネーズ並み」とされる軟弱地盤の存在である。技術的に相当な難工事が予想されるだけではない。地盤改良に必要な設計変更を、玉城知事はそもそも認めないと言っている。
岩屋防衛相はきのう、一日も早い普天間返還を実現するため「できるところから少しでも前に進めていきたい」と語った。しかし、工事の全体像や総工費も明らかにせず、見切り発車のように一部の工事を進めるのは、公共工事のあり方としても考えられない。
一日も早く、という言葉も空々しく響く。防衛省が先日、国会に提出した試算では、地盤改良に3年8カ月かかるという。仮にその通り進んだとしても、日米両政府が掲げた22年度の普天間返還は不可能だ。知事に設計変更を認めさせようと、国が裁判に訴えれば、さらなる工事の遅れは避けられない。
驚いたのは、岩屋氏が先月下旬の会見で「沖縄には沖縄の、国には国の民主主義がある」と言い放ったことだ。政府が国の安全保障に大きな責任を負っていることを言いたかったと釈明したが、沖縄の声に耳を傾けようとしない政府の姿勢そのものではないか。
那覇市で16日に開かれた県民大会では「日本が民主国家ならば国策の遂行が民意と無関係であってはならない」との決議が採択された。
この訴えに向き合うことこそ、政府の責務である。工事の強行ではない。