入管法改正案、衆院通過 介護現場「力量どれほど」 - 東京新聞(2018年11月28日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018112802000143.html
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外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案が二十七日、衆院を通過した。不十分な審議による影響が特に懸念されるのが、人の命を預かる介護現場だ。受け入れ側は、人手不足の解消へつながる期待の一方、「来る人たちの力量の見当がつかない」と質の低下を心配する。低賃金など根本的な介護職場の課題を改善することが先という声も強い。 (井上靖史)
「拙速に導入すれば、軌道に乗りかけたものも壊しかねない」。滋賀県湖南市の介護老人保健施設「石部ケアセンター」の沢九仁男(くにお)副施設長(40)は、改正案による新たな在留資格に困惑する。政府は介護人材を初年度は五千人、五年で五万〜六万人を受け入れる方針を示しているが、沢さんは「どんなレベルか、まず様子を見たい」と慎重に話した。
沢さんの施設は、昨年十二月以降、インドネシア出身の男女三人を介護人材の在留資格の一つ、経済連携協定(EPA)特定活動の候補生として受け入れた。一日八時間の勤務時間のうち二・五時間は日本語学習に充てさせ、イスラム教徒であることに配慮して礼拝のための休憩時間や部屋も与えている。「将来は施設のリーダーになってほしい」とし、日本の介護福祉士資格に四年以内で合格できるよう大事に育てている。
介護のEPAは十年前、インドネシアを皮切りに始まった。祖国で看護師や介護士の資格を持つ人たちが手を挙げ、両国の公費で事前に一年間、日本語などの研修を受け、施設に配属されている。日本語能力とケアの技量は高い人たちだ。それでも日本の資格取得の合格率は約50%と厳しい。
これに対し、改正案での新たな在留資格は「一定の日本語能力と技能を持った外国人」としか決まっていない。国は、母国での資格のない技能実習生から移行させる方針も提案している。
衆院を通過したこの日、国会前の路上では労働組合などでつくるグループ約百八十人が「外国人を雇用の調整弁とするだけでは産業が劣化する」と反対の声を上げた。日本医療労働組合連合会の米沢哲中央執行委員(46)は「介護の人手不足は仕事の負担と、見合わない低賃金が根本原因だ。職場改善を優先しなければ、外国人だって逃げ出してしまう」と強調した。