外国人受け入れ問題 続く「移民」論争、ぼやける焦点 - 東京新聞(2018年11月24日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201811/CK2018112402000143.html
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外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案を巡り、国会では事実上の移民政策かどうかが論点の一つになっている。安倍晋三首相は「移民政策ではない」と繰り返すが、移民の定義は曖昧だ。移民とは何か。受け入れるとどんな影響があるのか。肝心の部分が見えにくい論戦が続いている。 (柚木まり)
「移民と言いたくない理由があるのか」
五日の参院予算委員会立憲民主党蓮舫氏は、新たに受け入れる外国人と移民政策の関連について首相の見解をただした。
首相は「移民の定義は多義的で、特定の定義があるわけではない」とした上で「期間を設けず、家族も帯同で受け入れる(という)、いわゆる移民政策はとらない」と語った。
改正案は、一定の技能が必要な「特定技能1号」と、熟練技能が要る「特定技能2号」という在留資格を新設。1号は在留期限五年で家族帯同を認めず、2号は期限の更新と配偶者、子どもの帯同を可能とする。最長五年の在留が可能な技能実習生から新たな在留資格への移行も可能。1号を取得すれば計十年まで在留できる計算だ。
永住権の取得要件に関し、法務省の指針は「日本に十年以上在留し、このうち就労資格を持って五年以上在留」などと定める。このため、永住につながり得る新たな在留資格を設ける改正案は、事実上の移民政策との見方が出ている。
しかし首相は、移民政策とは認めていない。自民党を支持する保守層が、移民政策に慎重なことへの配慮とみられる。
野党は「やたらと移民という言葉を否定するから、どんな日本社会を作ろうとしているのか理解が深まらない」(蓮舫氏)と批判。移民の定義を示すよう求める声もある。
こうした論戦の中、来日した日系米国人のノーマン・ミネタ元運輸長官(87)は、本紙などの取材に「日本は正面から移民政策に取り組む時だ」と提言する。
第二次世界大戦中に日系人強制収容所へ送られ、下院議員時代、強制収容された日系人への公式謝罪と賠償を明記した「市民の自由法(強制収容補償法)」成立に尽力した。「米国は宗教も言語も人種も異なる国民でつくる国だからこそ、より強い国でいられる」と強調。「少子高齢化が進む中、移民や外国人の流入を厳しく制限することは、日本の将来や経済に良いとは思えない」と指摘する。