(私説・論説室から)「こだわり」にこだわろう - 東京新聞(2018年11月28日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018112802000186.html
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館内は日曜日午前の上映から満員だった。伝説の英ロックバンド「クイーン」を描いた映画「ボヘミアン・ラプソディ」。
映画全体を貫くのは四十五歳の若さでエイズで亡くなったボーカル、フレディ・マーキュリー氏が抱く、こだわりだった。曲作り、録音、シングルカット選曲、ライブパフォーマンス、家族やメンバーへの思い…。これらを同氏が特にこだわったであろう部分に絞って抽出し、当時のシーンを可能な限りリアルに描いている。世界中でヒットする背景には、このような作り手のこだわりに対する共感もあるのだろう。
クイーンと同じ一九七〇年代に一世を風靡(ふうび)したグループを再現するトリビュートバンドも、最近は人気を広めている。元レベッカなどの木暮武彦氏が率いてピンク・フロイドの世界を表現する原始神母、レッド・ツェッペリンのライブを衣装、機材まで再現するジミー桜井氏のミスター・ジミーなどは、その代表格。いずれも本家のバンドのこだわりに忠実に寄り添い、若いファンにも当時の空気を体感できると喜ばれている。
今後は東京五輪パラリンピック大阪万博など国際ビッグイベントが日本で続く。これらを経済効果などでひとくくりにしても、人の心には何も残らない。どのような「こだわり」をそこに残していくのか、こだわって考えていきたい。 (鈴木遍理)