(私説・論説室から)故マケイン氏の高潔 - 東京新聞(2018年9月26日)

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二〇一六年の前回米大統領選後に行われた世論調査によると、オバマ大統領(当時)がケニア生まれと思っている人は36%に上った。大統領選でトランプ氏に投票した人の実に半数、クリントン氏に投票した十人に一人もそう答えた。
オバマ氏の父親はケニア人で、ハワイ留学中に米中西部カンザス州出身の白人女性と出会って結婚。オバマ氏はハワイで生まれた。
八月に亡くなった共和党の政治家・マケイン氏も〇八年の大統領選でオバマ氏と争った時、選挙集会で女性からこう聞かれた。
オバマは信じられないわ。だって彼はアラブ人でしょ」
マケイン氏は「違います。彼はまっとうな米国市民です。たまたまわれわれとは基本的な問題で意見が違うだけです」とたしなめた。
オバマ政権時代、マケイン氏は中国やロシアに対するオバマ外交を「弱腰だ」と容赦なく批判した。それでも二人は認め合っていた。マケイン氏は自分の葬儀で弔辞を読んでくれるようオバマ氏に頼んでいた。
この高潔で孤高の政治家は党派を超えて尊敬を集めた。トランプ大統領とは対極の存在だった。
七年前に「ケニア生まれのオバマ氏には大統領になる資格はない」と騒ぎ立てたのはトランプ氏。フェイク(虚偽)乱発は今に始まったことではないようだ。 (青木睦)