消費税10%対策 お金持ちに有利になる - 東京新聞(2018年11月28日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018112802000184.html
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政府与党が検討する消費税増税時の対策は来年の統一地方選参院選を意識した単なるバラマキではないのか。増税の意味を消失させ、欠陥である逆進性を増幅し、将来世代まで愚弄(ぐろう)するものだ。
効果が期待できない対策にまで巨額の税金を投入するなら、何のための増税か。怒りが込み上げる人も少なくないだろう。
商品券配布やポイント還元といった痛税感の目くらまし策のことだ。さらに防災・減災に名を借りた公共投資の拡大も大いに疑問があるし、この機に乗じてキャッシュレス化やマイナンバーカードの普及促進に税金を投じるのでは「何でもありか」との批判は免れまい。
日銀の試算では今回の増税による負担増は年五兆六千億円だが、軽減税率や教育無償化などで実質的には二兆二千億円といわれる。
それに対し、この対策の規模はそれをはるかに上回ろう。増税の本来の意味は、将来世代への負担先送りを減らすためだったが、逆につけ回しを増やすものだ。
過去の増税時などに繰り返されたプレミアム付き商品券や定額給付金地域振興券は、単に日々の買い物代の代用にされ、消費を持ち直させる効果は期待外れに終わったことを忘れたのか。
相変わらず金券やポイントで一時的にでも潤えば、国民は喜んで財布のひもを緩めるとでも思っているのだろうか。国民をばかにするにも程がある。
今回新たに出てきたポイント還元策は、クレジットカードや電子マネーなど現金以外で買い物をした場合に、金額の5%分をポイントとして消費者に戻すという。つまり今よりも減税になる。
現金しか使わない人、あるいはさまざまな理由でカード類を持たない人、持てない人が恩恵を受けられないのは不公平だ。カード類を多用するお金持ちに有利になり、格差を拡大させかねない。
低所得者家庭に発行を限るというプレミアム付き商品券も、慌てて二歳児以下の子がいる家庭を追加したが、利用する人の尊厳を十分考慮したのだろうか。
現金しか扱わない零細商店にとっても恩恵はなく、あまりに配慮を欠いている。
増税の影響を抑えるのに躍起になるよりもやるべきことがある。富裕層に有利な金融所得課税の増税にいつまでも手を付けないのはおかしい。六年近くのアベノミクスは格差を拡大させたが、今回の対策はそれを一層強めるだろう。