社会保障改革 政権の覚悟が問われる - 東京新聞(2019年9月21日)

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安倍晋三首相が内閣改造に当たり「大胆に構想する」と宣言した社会保障制度。政府がきのう集中的に検討する会議の初会合を開いた。「将来の安心」を得る改革に、政権を挙げて取り組むべきだ。
首相はきのうの初会合で、全世代型社会保障への改革を「最大のチャレンジだ」と位置付け、「社会保障全般にわたる持続可能な改革を検討していく」と、意気込みを語った。
ならば必ず向き合わなければならない課題がある。
少子高齢化の進展で今後、医療や介護の費用は増大する。年金も給付を抑えていくしかない。
その状況下では、給付の削減や負担の増加などの「痛み」をどう分かち合うのかという「負担の分配」の議論を避けて通れない。これが一つ目の課題である。
特に、費用の増大が著しい医療保険は負担増が最大の課題だ。
検討会議では、七十五歳以上の窓口負担を今の一割から二割に引き上げるかどうかが論点となる。
介護保険も、介護サービスの自己負担の引き上げなどが焦点となる。年金は制度の支え手を増やす対策などを考えねばならない。
検討会議は年内に中間報告、来年夏に最終報告をまとめる方向だが、これらの検討項目は目新しいものではない。団塊世代が七十五歳以上となる二〇二五年を見据えた改革議論の中で既に指摘され、先送りされてきたものだ。
新しい会議を設けた以上、二つ目の課題が加わる。
二五年を乗り越えるための制度の見直しは、一二年に旧民主、自民、公明三党の「社会保障と税の一体改革」合意で取り組まれた。消費税増税の税収を財源にして制度を立て直すものだった。
今、議論すべきはその先だ。高齢者数がピークに近づく四〇年を前に対策を迫られている。必要な費用は今より増える。認知症の高齢者が増える一方で、介護を支える人材が不足する。担い手の確保にも知恵を絞らねばならない。
その財源をどう確保するのか。十月に消費税率は10%に引き上げられるが、首相は「今後十年くらい」はさらなる増税の必要性を否定している。だとしたら、消費税以外の税や保険料による財源確保の検討も避けられない。
制度をどうつくり直し、納得できる給付と負担のバランスをどう実現するのか。将来像を示す責務が、政府にはある。この難題と向き合う覚悟なくして「大胆に構想する」ことなどできはしまい。