(海自艦から実弾落下)事故続発の徹底検証を - 沖縄タイムス(2018年11月24日)

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国民の生命を守るべき自衛隊が国民を危険にさらすという憂慮すべき事態だ。
海上自衛隊護衛艦「ちくま」が22日午後、久米島の北西約130キロの海域で、高性能機関砲の実弾21発を落下させた。
実弾は直径約30ミリ、長さ約168ミリ、重さ約250グラム。現場の水深は約140メートルで、実弾は海底まで沈んだとみられるが、強い衝撃を受けると破裂する可能性がある。
当時、自衛官は機関砲に入っていた実弾を抜き取る作業をしていた。甲板に押し寄せた波の影響で誤って実弾を海に落下させたという。
甲板上の作業では波をかぶる作業を想定していたとみられるが、マニュアルはどうなっていたのか。人為的ミスであれば上官の指導はどうだったのか。武器管理のずさんさを示すものではないか。
海自は網に掛かったりした場合には連絡するよう漁船に注意を促している。
だが久米島町久米島漁協にも海自から連絡がなく、不信感を募らせている。現場海域はマグロの好漁場で漁船が頻繁に往来する。大田治雄町長が「トラブルを起こしたなら連絡があってしかるべきだ」と憤るのは当然だ。
米海軍のFA18戦闘攻撃機が南北大東の南西海上に墜落し、県漁連が沖縄防衛局に抗議したばかり。墜落海域はマグロや今月から解禁されたソデイカなどを求めて本島からも多数の漁船が出漁する。
日米両政府には漁民が安心して操業できる手だてを講じてもらいたい。

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一歩間違えれば大惨事につながりかねない自衛隊の重大事故が相次いでいる。
今月14日、滋賀県陸上自衛隊饗(あい)庭(ば)野(の)演習場(同県高島市)から発射された81ミリ迫撃砲弾が目標地域から外れて演習場外の国道付近に落下し、さく裂した。破片などで約40メートル先に駐車していた乗用車の窓ガラスが粉々に砕けた。乗っていた男性にけがなかったのは、「偶然」(岩屋毅防衛相)にすぎない。
砲弾は発射地点の西約2・5キロ先の目標地域から約1キロ北の場所に落ちている。照準を誤って設定、距離をさらに伸ばして発射した人為的ミス、と陸自は認めるが、基本動作を怠っており、深刻だ。
7月には那覇空港に着陸したE2C早期警戒機のタイヤがパンク。滑走路が閉鎖された。6月には緊急発進(スクランブル)しようとしていたF15戦闘機2機が管制官の指示を守らず滑走路に進入、航空事故につながりかねない重大インシデントを起こした。

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一つの重大事故の背景には29の軽微な事故があり、その背景にはさらに300のヒヤリとする事故が存在するといわれる。陸・海・空自が県内外で立て続けに事故を起こしていることを考えれば軽微な事故、ヒヤリとする事故はもっと起きているに違いない。
中国の海洋進出に対抗するため活発化する日米合同訓練との関係はないのか。訓練が激しさを増せば、事故が多くなるのは必然である。
防衛省自衛隊は事故が続発する背景についても検証しなければならない。