外国人労働者 差別のない就労条件で - 東京新聞(2018年10月29日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018102902000141.html
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外国の単純労働者を迎え入れる新在留資格の法案が出される予定だ。人手不足への対応だが、高度な専門人材に限っていた従来の政策から大転換となる。差別のない社会をつくるのが大前提だ。
「移民」に対して保守層は強い反発を持っている。だから、政府は強く「移民とは異なる」と説明する。だが、高度な技術などを持つ外国人に限って就労できる−という建前は既に崩れている。
昨年十月段階で外国人労働者は百二十七万人超と増え続ける。その約四割は技能実習生と留学生アルバイトなのだ。実習生は日本での技術の習得を目的としているが、実際には単純労働をさせられ、低賃金や長時間労働などに苦しむ問題が判明している。
留学生はむろん学業のためだが、こちらもコンビニや飲食店などでの単純労働者になっている。つまり外国人がいないと、人口減に直面する日本では、さまざまな業種で人手不足が深刻になる。政府は建設や介護、農業など十数業種を検討対象に考えている。
だが、人手のために単純労働者の受け入れ制度を−との考えは発想が単純すぎるのではないか。例えば一定の技能を持つ「特定技能1号」の在留資格の外国人は、在留期限が通算五年で、家族の帯同は認められない。
これは人権保障の観点から大問題である。日本にいる限り憲法や国際人権法などの光に照らされる労働者でなければならない。長期間の家族の分離を強いる仕組みであってはなるまい。
職場移転の自由があっていいし、日本人の労働者と同様の労働条件にすべきだ。賃金や労働時間などで国籍や民族を理由とした差別を認めてはいけないはずだ。
熟練者対象の「特定技能2号」の場合は家族帯同も、事実上の永住も認める仕組みだ。それならば、まず家族のための日本語教育が求められよう。医療も福祉も教育も、日本人と同様のサービスを提供すべきなのだ。
日本社会とどう溶け合っていくかも大きな課題になる。国や自治体、企業、NGOなどとの連携も不可欠である。日本でともに働き、暮らす仲間を快く迎えられる環境づくりがまず必要だ。
政府は法改正し来春にも新制度を実施するという。急ぎすぎではないか。
技能実習生の例があるように、外国人をまるで使い捨て感覚で雇用すれば、国際社会から「奴隷的」と烙印(らくいん)を押されるだろう。