(私説・論説室から)安倍政権の手法考 - 東京新聞(2018年8月1日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018080102000168.html
https://megalodon.jp/2018-0802-0930-06/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018080102000168.html

例えば「働き方改革」などの政策を立案したり、変更したりする際に重要なことは何だろうか。少々、堅い言い方になるが、それは「エビデンス(客観的証拠)」に基づいて政策を行うことだ。
平たくいえば「この政策を行えば、こういう効果が表れる」と政策と効果との間にはっきりとした因果関係が認められるものだけを行う。効果が予測できる政策を行うのだから合理性がある。世界一の借金大国で財政に余裕がない日本こそ本腰を入れるべきものだ。
ところが、米国や英国に始まり先進諸国や経済協力開発機構OECD)などの国際機関でも一般的になっている手法なのに、日本では安倍政権になって疎(おろそ)かにされている。否、むしろ逆の方向に進んでいる。
つまりエビデンスや立法事実(法律が必要とする経済的や社会的な事実)というものを半ば無視し、結論ありきで政策を進める。ついには「政策に基づいてエビデンスを捏造(ねつぞう)」するということまでやってしまう。
裁量労働制に関したデータ疑惑が代表例である。「過労死を助長する」との批判が渦巻く中、裁量労働制の方が労働時間が長い調査結果が出れば、それは不都合な真実になる。
そこでデタラメのようなデータを出して欺こうとした。結局、嘘(うそ)がばれてやり直しとなったが、この政権のやりたい放題を正すにはエビデンスを突き付けることだ。 (久原穏)