http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018050202000165.html
https://megalodon.jp/2018-0502-2218-22/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018050202000165.html
シリア攻撃では米国に同調した英仏がニュースの見出しに躍ったが、脇役に回ったドイツの振る舞いにむしろ潔さを感じた。
メルケル独首相はシリアでの化学兵器使用は批判したが、「ドイツは軍事行動には参加しない」と早々に明言し、国連の枠内での平和的解決を目指す考えを強調していた。欧州連合(EU)のリーダー格でありつつ一歩引き、手を汚そうとはしない。
野党は同盟国への支援を欠くと批判したが、シュピーゲル誌(電子版)のコラムは「向こう見ずで信頼できないトランプ米大統領と距離を置くのは正しい」と評価した。トランプ氏嫌いが多いドイツでは、攻撃不参加への支持は多い。国内にはシリア難民も大勢いる。世論にも配慮した決定だったのだろう。
ナチの侵略の歴史を踏まえ軍事力行使を控えてきたが、国連のお墨付きを得たアフガニスタンの国際治安部隊には参加、十三年間にわたる派兵で五十五人の兵士が死亡し、住民百人以上が巻き添えになった誤爆も引き起こした。軍事行動には懲りてもいる。
今回の攻撃不参加では、EUの盟友フランスのマクロン大統領とも一線を画した。一方で、シリアの後ろ盾であるロシアのプーチン大統領と電話協議する独自外交も続けた。欧州の協調を掲げながらも、自らの立ち位置は守る。米国追従一辺倒の国からは、その頑固さがまぶしく見える。 (熊倉逸男)