(私説・論説室から)働き方の国民性 - 東京新聞(2017年8月21日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2017082102000128.html
https://megalodon.jp/2017-0822-0944-09/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2017082102000128.html

プロ野球中日ドラゴンズ森繁和監督が、長女ががんで余命いくばくもなかったにもかかわらず、ベンチで低迷するチームの指揮を執り続けていたという。
個人的な問題で仕事ができないとは言いたくないと思ってきた。だから、森監督の姿勢には頭が下がった。ただ、心中の葛藤を察すると切なかった。
家族はかけがえがない。他人に家事や介護を手伝ってもらうことはあるかもしれないが、子どもや親の代役はできない。健康管理など自分自身に関わる問題でも、自ら対処しなければ状況は改善しない。
森監督の場合は違うとしても、仕事はおおむね替えが利く。担当者が替わっても組織は回っていく。
それでも仕事にのめり込みがちなのは、使命感や責任感も後押ししているのだろう。
かつて駐在していたドイツでは、担当者の休暇で業務がストップすることはしばしばだった。勤勉なイメージのドイツ人だが、有給休暇はほぼ完全消化し、家族旅行を楽しみに働く人も多い。「仕事の後は楽しく休める」−休みを重視することわざも多い国だ。
過労死対策として行政が音頭を取る仕事と生活の調和(ワークライフバランス)。価値観や国民性の問題も絡む。お盆休みは里帰りや行楽を楽しむ家族連れも目立った。改善しつつある兆しだろうか。   (熊倉逸男)