戦時下演じる高校生「東京大空襲 伝えたい」 野田中央高・演劇部が24日:千葉 - 東京新聞(2018年3月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/list/201803/CK2018032102000157.html
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東京大空襲を伝える演劇に県立野田中央高校(武井信一校長)演劇部が挑戦する。二十四日午後二時から野田市中野台の欅(けやき)のホールで上演する。東京電力福島第一原発事故福島県富岡町から避難を余儀なくされた生徒や、小学校まで沖縄県で学んだ生徒も出演。「東京も戦場だったことを伝えたい。平和の大切さを知ってほしい」と練習に取り組んでいる。 (林容史)
上演する作品は、同校で国語を教える演劇部顧問の石山清貴さん(57)が構成、脚色した「語り継ぐべき詩(うた)」。雑誌「暮しの手帖」が一九六八年に特集した読者の戦争体験を単行本化した「戦争中の暮しの記録」を題材に制作した。県立流山おおたかの森高校(流山市)演劇部が二〇〇八年に初演。今回、十年ぶりに石山さんの演出で総勢二十人の部員が再演する。
現代の女子高校生が、手にした本の中にひいおばあちゃんの手記を見つける場面から物語は始まる。干し芋作りや学童疎開、軍事教練、逃げることが許されない消火活動など、普通の人々が投げ込まれた戦時下の生活を描いていく。
主役の女学生を演じる二年の深野涼花(すずか)さん(17)は東日本大震災時、福島県富岡町にいた。家族全員、津波被害は免れたが、すぐに福島第一原発事故で埼玉県や福島県いわき市などに避難を余儀なくされた。中学二年生の時、父親の転勤で千葉県内に引っ越した。
深野さんは「戦争でも原発でも逃げるのは一緒。すーっと脚本が体に入ってきた」とうなずく。「一緒に歌を歌って絆を深め合う家族のあり方も表現したい」
演劇部の部長を務める二年の右田七海さん(17)は、父親の仕事の関係で三歳から小学五年生の十一歳まで沖縄県糸満市に住んでいた。授業では沖縄戦の悲惨さが繰り返し語られ、おばあさんたち語り部の話にも耳を傾けたという。
「戦争の話をたくさん聞いてきた。でも沖縄や原爆が投下された広島、長崎は映画やテレビ番組などで繰り返し伝えられるのに、大きな被害を受けた東京大空襲があまり知られていない」と右田さんは訴える。
空襲による大火で人々は逃げまどい、劇は終焉(しゅうえん)へと向かう。映像や詩の朗読を交え、あらためて戦争の意味を問い直す。
石山さんは「幸せな暮らしは空襲警報で一瞬にして壊されてしまった。戦争とは何だったのか。戦争の経験のない高校生たちに演じてほしかった」と話す。
入場無料。問い合わせは欅のホール=電04(7123)7818=へ。

東京大空襲> 第2次世界大戦末期の1945年3月10日未明、米軍の爆撃機B29約300機が東京上空に飛来、今の墨田、江東、台東区など下町地区を中心に大量の焼夷(しょうい)弾が投下された。市街地は焼き尽くされ、一般市民ら死者は10万人に上ったとされる。44年11月から続いた大規模空襲でも最悪の被害となった。