http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/220678
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那覇市から生活保護を受けていた40代女性が、娘2人の借りた貸与型奨学金を「収入」とみなされ、市に生活保護費計約93万円の返還を求められた処分を不服として沖縄県に審査請求した問題で、県は5日付で、女性側の訴えの一部を認め、長女分の奨学金を収入認定した市側の処分を取り消す裁決を出した。長女の奨学金に対する市側の対応が著しく妥当性を欠くと認めた。(社会部・国吉聡志、浦崎直己)
一方で裁決は「女性は長女が初回に受けた奨学金の額を報告した以外は、奨学金収入を申告していない。次女の奨学金については事前の相談や事後の報告すらしていない」と指摘。女性側の対応も「収入に変化があった際に行政側への報告を義務付けた生活保護法61条に違反しており、重大な瑕疵(かし)が認められる」として次女分の請求を棄却した。
審査請求書によると女性は2003年から15年まで市から生活保護を受け、受給中の12年6月に長女が県国際交流・人材育成財団から奨学生として採用された。長女は月額1万8千円の奨学金を受け、次女も同財団から同額の貸し付けを受けた。
市は女性側が受けた奨学金を「収入」と判断。保護費の一部が過払いになるとして、15年4月に奨学金と同額の計100万8千円の返還を求める処分を出した。女性は処分を不服として県に審査請求した。
県は同年8月、市側の瑕疵を認めて処分を取り消した。市側は16年5月、必要経費として認めた7万7千円を減額した計約93万円の返還を女性側に求めていた。
那覇市の担当者は「長女については指導などの手続きが十分ではなく、返還処分が認められなかった。事実に間違いはなく、裁決に従いたい」と話した。
教育費無償化などの手だて必要
島村聡沖縄大学准教授(社会福祉学)の話 裁決は、奨学金返還における那覇市の対応に不備があったかどうかなど、あくまで手続きに対する判断に過ぎない。
子どもの資格取得などのために、奨学金を借りた親の思いは評価してもいい。相談や申告をしないなどの瑕疵(かし)はあるが、ケースワーカーとのコミュニケーション不足も感じる。これにはケースワーカーが足りず、1人で多くケースを受け持つために、関わる時間が少ないことも一因にある。
生活保護費で保障するのは最低限度の生活レベルなために、勉強や進学を諦めるケースも多い。一方で、生活保護を受けずに進学などを諦める低所得世帯もいる。全ての世帯を対象にした教育費無償化などの手だてが必要だ。
1ケースの問題ではなく、国の福祉や教育行政を考える視点で捉えてもらいたい。