(余録)世界では生まれたばかりの赤ちゃんが毎日7000人以上亡くなっている… - 毎日新聞(2018年3月4日)

https://mainichi.jp/articles/20180304/ddm/001/070/175000c
http://archive.today/2018.03.04-005843/https://mainichi.jp/articles/20180304/ddm/001/070/175000c

世界では生まれたばかりの赤ちゃんが毎日7000人以上亡くなっている。国連児童基金ユニセフ)によると、2017年に生後28日未満で死亡した乳児の割合が最も高かったのはパキスタンで、貧困と紛争に苦しむアフリカ諸国が続く。
最も低かったのは日本だ。終戦直後は日本の乳児死亡率も高かった。改善に大きな役割を果たしたとされるのが母子健康手帳だ。妊娠した母親に市町村が手渡し、出産後も母子の健康をフォローする。
日本で誕生した母子健康手帳は海外にも紹介され、今は40カ国以上で使われている。それぞれの国の事情に合わせてサイズや内容が改良されている。国際協力機構(JICA)が協力した25カ国と日本だけでも年間800万冊が発行されている。
乳児死亡率の低さでは世界一の日本だが、現在は子どもの貧困や児童虐待が深刻化している。孤立しがちな母親から悩みや不安を伝えてもらうため、最近の手帳には母親が自由に書き込めるスペースが増えている。
沖縄では父親の育児参加を進めるため名称を「親子健康手帳」に変え、子どもが20歳になるまで継続して使えるようにしている。子育ての環境が変わり、自治体も手帳を進化させている。
学校の授業で母子健康手帳を使っているところもある。いじめ、不登校、自殺願望……。生きにくさを感じる子どもが多くなった。手帳には赤ちゃんだったころの自分のことがつづられている。お母さんのやさしい思いを知り、泣き出す子もいるという。