https://mainichi.jp/articles/20190905/ddm/005/070/126000c
http://archive.today/2019.09.05-014645/https://mainichi.jp/articles/20190905/ddm/005/070/126000c
悲劇がまたも繰り返された。
鹿児島県出水(いずみ)市で4歳の女児が死亡し、同居していた母親の交際相手の男が暴行容疑で逮捕された。
女児は「風呂でおぼれた」として病院に運ばれたが、体に複数の殴られたような痕があった。県警は日常的に虐待を受けていた疑いがあるとみて調べている。
やりきれないのは、女児を救えるタイミングは何度もあったのに、生かされなかったことだ。
まず、母子が隣の薩摩川内市に住んでいた3月、「男が女の子の顔にシャワーを浴びせている動画が流れている」との匿名情報が県の児童相談所に寄せられた。児相や市の担当者が母子に会ったが、虐待を疑わせる傷は確認できなかったという。
3月と4月には計4回、夜遅くに1人で外にいた女児を県警が保護していた。うち2回については児相に一時保護を検討するよう伝えたが、児相はただネグレクト(育児放棄)の認定をするにとどまった。
さらに、母子が出水市に転居した後の8月上旬には、複数のあざのある女児がいるとの情報が病院から市当局に伝えられたが、市は児相や県警には伝えなかった。
出水市と児相の対応の甘さは明らかだ。東京都目黒区の5歳女児、千葉県野田市の10歳女児らが犠牲となった虐待死事件が相次いで起きていただけに、もっと危機意識を持つ必要があったはずだ。
深刻なネグレクトをうかがわせる状況や日常的な暴行を疑わせる情報を、結果的に見過ごしてしまった責任は重い。
各機関は容疑者の男が同居していることに気付かないままだった。一時保護のほか、母親からもっとしっかり家庭の状況を聞くことが必要だったのではないか。
全国的に児相の人手不足が課題となっている。児童福祉司1人当たりの虐待の相談対応件数は昨年度、全国で46・7件にも上った。鹿児島県は平均を下回る30・6件だが、それでも最悪の事態が起きてしまったことを深刻に受け止めるべきだ。
関係機関に虐待の兆候を見逃すまいという強い意識がなければ、悲劇を防ぎきれない。救えた命を後から惜しむのは、もう終わりにしなければならない。